【魔法少女レムリア短編集】夏の海、少女(但し魔法使い)と。【11】
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検索し、開いて、相原は苦笑した。
「どうかしたの?」
「見てみ。こうなっとるらしい」
レムリアに見せる。
「ん?……あ、ひど……」
それはこの店のサイトのトップページ。
“夏休みのミステリー!?行方不明事件の姫様6時半来店予定!”
しかも防犯カメラの画像をパソコンに取り込んだものだろうか、レムリアの写真付きである。
人寄せパンダ。わがままを言ったのは確かだが、だからって無断使用はどうだろう。
レムリアは膨れ面でしばらく画面を見た後、画面を閉じ、両の手で電話を挟み、目を閉じた。
何事か唱えるように口元を動かす。
そして画面を開き、確認するように中を見、相原に戻す。
相原は吹き出した。
“行方不明事件の姫様、来たけど帰りましたから。残念!”
程なく、えー!なんだよー!といった類の声が店外階段の行列の方から上がり、文句の声が広がり、ぞろぞろ歩いて降り始める。行列の中に、携帯電話でサイトを覗いた者があったのだろう。
「お主、悪だな」
時代劇調で相原は言った。
「咎めぬお主も相当よのお」
レムリアは歯を見せて返すと、パフェの底に残ったコーヒーゼリーの最後のカケラを頬張った。
食事は終了。
伝票を指でつまんで立ち上がる。その時、明らかに食事目的とは思われない、急いだ調子で階段を上がってくる足音。
性急にドアが開かれる。ドアベルの鳴り方が荒々しい。
(つづく)
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