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【魔法少女レムリア短編集】夏の海、少女(但し魔法使い)と。【6】

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 レムリアは行き過ぎる彼女たちを目で追い、一瞬だがうつむいた。
 相原に向かって笑顔を見せる。
「あっち行くよ!」
 あっち、と指さしたそちらは、海水浴には不向きな、人の姿の見えない岩場。
 走り出す。その姿が、まるで人混みから逃げ出すように感じられたのは、相原の気のせいか。
 見失って少女ひとりもどうかと思うので、相原は若干早足で彼女を追う。
 テーブル状の、大きな岩の向こうの潮だまり。
 波がないせいか、水は澄んで見える。とはいえそれは見た目だけで、所詮神奈川相模湾、見た目ほど綺麗じゃないのは承知。
 しばらく水遊び。小さなフグを追いかけたり、ヤドカリやタマキビといった貝類、カニも探した。
 満ち潮になり彼らが逃げ出すと、レムリアは小さな岩に腰掛け、水に浸かった足をばしゃばしゃ。細身のせいか手足が長く見える。特に足は書いたように色白なので尚。
 細くて華奢。それが出会った時の相原の感想。だが今はどちらかというと“長い”という印象が先に来る。
「じろじろ見るな」
 レムリアは水滴を相原に蹴ってよこす。光弾ける水滴の向こうの横顔。
 いたずら少女の笑顔である。だが、その目が少し寂しげにも見える。
 相原は濡れたメガネをハンカチで拭って。
「なぁ」
 声を掛ける。何か言ってやりたい……のだが、果たして何を言えばいいのか。
「ん?」
 レムリアは足のバシャバシャを止め、小首を傾げた。少女マンガのヒロイン向き、と相原は評しているわけだが、こういう動作・姿勢をされると、それが一層際立つ。
 出会って1年。
「お前、綺麗になったな」
「え……」
 レムリアは目を見開いた。
 相原は言ってから自分で驚いた。かわいい娘だとは思っているし、そう思ってると表明もしている。でも、口をついて出たのはそうではなかった。
 
(つづく)

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