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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-001-

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~第2部~
 



 
 相原学(あいはらまなぶ)は物語を書くのが好きな青年であった。
 そのあらすじを考えるのに、専ら自宅近くの草むらを利用した。
 満月の夜は、より強いインスピレーションが得られそうな気がした。最も、それは工学系の学生としてあるまじき発想だという自覚はあった。オカルトの知識はファンタジー系の話を書くために持ってはいたが、あくまで創作用の予備知識であり、日常とは切り離した別の世界としていたのだ。
 別々の世界観が混交を始めたのは、思い出したくもないひどい失恋が起因していた。濡れ衣と誤解の汚辱にまみれ、罵声を浴びせて相手は去った。
 寝汗と共に目覚めるとそれまで見知ることの無かった少女の影が心理意識に居座っていた。彼女は髪が短い細っこい娘であって、その容姿外見は去った相手と対極に、むしろ硬質で鋭利な、そして純粋な少年を思わせる側面すら持ち合わせており、魔女だと称した。彼は衝撃と反動が夢を通して作りあげた理想人格であると判断し、当初は別段気にも留めなかった。
 しかし、以降時折、啓示託宣の形式を取って、〝彼女〟から超自然的な内容のエピソードが意識にもたらされるようになった。それは物語としてまとめるのに適切であり、実際幾つか書き起こしたが、その機序はあらすじを考えて肉付けするという通常の創作のパターンとは大きく異なった。それは苦も無く話を紡げる反面、白昼夢を見ているのではないか、ひいては、自分が次第に狂気にさいなまれて行きつつあるのではないか?という恐怖を彼に与えていた。ただ、その白昼夢は見ている分には居心地良く、体のいい現実逃避の認識があったことは自身否めない。半年を費やし、その物語は仕上がった。
  
(つづく)

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