アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-002-
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秋の気配が感じられる頃であった。
満月が夜空全体の支配者となって光り輝いていた。頭上の遙かに高い位置から、彼を含む草むら一帯を、昼とは違う光の時間が存在するとの主張を交えて照らしていた。
彼は寝そべって、顔の上に垂れ下がった草の上、翅震わせて鳴く虫のディテールをシルエットで見ていた。その表情は冴えず、服装は屋外にもかかわらず寝間着にはんてん(半纏)。ラフに過ぎる部屋着そのものであり、他人の目線など考慮の外。
ため息をつく。吐かれた息で草が揺れ、虫が鳴くのを止め、ピョンと跳ねて逃げて行く。
彼は両手を地面に投げ出すように大きく広げ、地面に頭をゴツンとぶつけ、月に目を向けた。
そして「はぁ?」と一人疑義の声をあげた。
月の左隣に、同様の明るさで輝く光の点がある。
彼は一旦眼鏡を外し、不備が無いか確かめるように見回し、再び目に掛け直し、再度月を見上げた。
「火球(かきゅう)か!」
立ち上がりはんてんの袖口に手を突っ込み、携帯電話を手にする。火球とは極めて明るい流星のことである。
しかし、彼は携帯電話で何か操作をするでなく、そのまま〝火球〟に見入った。携帯電話を介して天文愛好者向けの掲示板に投稿しようとして、中断したのだった。
彼の周囲が照らし出される。月明かり以上に明るくなり、彼の影が応じて濃く黒くなる。その影が揺らめき動き、〝火球〟の照らすエリアが明確に彼の周囲であることを教える。
「ノヴァ?……ちげぇ」
超新星爆発ではないか……違う。彼が結論した理由は単純、その〝火球〟が動き出したからだ。
左右に少し揺れた後、その揺れが止まり、次第に大きくなってくる。
それは真っ正面から近づいてきていることを示した。テロ国家による拉致事案、宇宙人の襲来……馬鹿げていると判っていても、そのようなシチュエーションを想起させずにはいられなかった。
逃げ出そう。彼は考えた。しかし向きを変えた彼を、その背後から猛烈な暴風が捉える。
(つづく)
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