アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-005-
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レムリアは相原の認識に少し驚いたか、目を丸くして見せ、次いで、両の手を相原に差し伸べた。
「でしたら、実体かどうか、確認いただいて結構です。判断するのは、あなた自身」
すると相原は月明かりに白く細いレムリアの手先を見、歩き出そうとして数歩足を運び、躊躇うように足を止めた。
「信じろ、とは申しません。ただ、私が用意できる確実な判断材料は私自身ですので」
レムリアは逆に自分から歩き出し、相原の手を取った。
骨張ってクッション感の少ない、しかし熱い男の手。
対し、肌理という漢字の起源が判る、滑らかで繊細な、少しひんやりした感触の小作りの手。
女の子の手。……それは相原の側の認識であるが、レムリアには、彼がそう感じた、と知ることが出来る。
相原は彼女の小さな手をそっと、否、こわごわ、己れの手のひらで包み、
握って離さない。
「お願い……って言ったか?」
「ええ。あなたが、私を、私たちを、信じて下さるのであれば、ですけど」
相原はそれを聞いて、そっと握った手を離す。
まるで姫を城へ返すように、そっと。
レムリアは悲しげな顔をして見せた。確かに、彼の挙動は受け入れると言うよりは拒否・返却に見えなくもない。
しかし。
「物語の中の君は、僕に物語を教えた君は、幻ではなかったと、君は言うんだな」
相原は草むらに膝をつき、下からレムリアを見上げた。
弱い気流が、彼女の髪を緩く揺らす。
「ええ、あなたが認識している私の全ては、妄想でも、白昼夢でもありません。……信じて下さるかどうかは、あなた次第、ですが」
「夢かも知れない、とたった今も思っているよ。ああでもそのことが判ってるんだ。君は……魔女だっけな。魔女が超能力ひと揃い持っていて不思議ではないか」
彼女レムリアは頷いた。
(つづく)
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