アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-010-
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そんな彼女を、相原はビデオの静止画のように固まって呆然と見つめた。
少しあってレムリアの視線に気付いたようで、相原は薄笑みを浮かべて腕組みをした。
「正義の味方上等。まぁ、船長代理ってもどれだけ出来るかワカランがね」
「お前にFEL(ふぇる)を振り回せとは言わんよ。乗れ。副長に会わせる」
アリスタルコスが顎をしゃくる。
「ありがとう!本当にありがとう!入って。こっち」
レムリアは相原の手を握ると、ぶんぶん振りながら引っ張り始めた。
照れた顔で応じる相原を、アリスタルコスがニヤニヤ見下ろす。
相原は船に足を踏み入れる。通路が船体左舷に沿って前後に通じている。
それはSFの宇宙船に足を踏み入れたと言って良かった。六角形を上下方向に引き延ばしたような断面形状であり、照明はほぼ天井全体が一様に光っている。船体輪郭に合わせて緩く湾曲しており、前端、後端は見通せない。
「すげえ……」
相原は立ち止まって見回す。それこそ映画用実物大模型の見学者である。
「でも、あなた、一度入ってるん、だよ……」
レムリアは……遠慮気味に言った。
雪の中、担ぎ込まれて。
「え?」
相原はきょとん。
「まぁ覚えてねぇかもな。お前半分失神してたし。さて悪いけど急いでくれねぇかな。見学なら飛んでから幾らでも出来るからよ。俺たちは止まっていたら意味がねえんだ」
アリスタルコスは殺伐と言った。
「ああ、そうだな」
相原が応じ、一行は通路を後方へ向かう。程なく、左手に天突く高さの大きな扉が現れる。銀行の大金庫を思わせる円環のハンドルが付いている。
「操舵室」
「その通り。……レムリアです。相原さん連れてきました」
レムリアが言い、相原のイヤホンにピンという甲高い音が返る。
それが〝了解〟の意思表示であることを相原は知っている。
(つづく)
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