アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-011-
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氷河の軋みを思わせる重い音がし、扉左右のカンヌキが外され、左右に開き出す。
室内はドーム状であり、天井では高輝度放電灯が青白く光る。大きなテーブル……画面上向きにセットされた液晶テレビ……が配され、女性1名、男性2名がその前に並んで待機。
「アルゴ号へようこそ。お久しぶりと言うべきでしょうか。相原さん」
天国で午後のそよ風を感じる機会があるのなら、彼女の声は最も近いのではあるまいか。
……とは、相原自身による物語の表現。副長セレネ。遙か古代に存在した砂漠の貿易国家、パルミラに祖を持つというその容姿は、一見して国籍不明。まとうヴェールはアラブの衣装かローマのトガ(toga)か。
端麗にして端正な大人の女性なのだが、いわゆる官能的な要素を見出すことは難しい。そうした次元を超越した印象を備え、高貴で透明で、それこそ遙かな国を吹く風のようだ。
「はい、相原です。セレネさん」
相原は(美しいの意であろう)ほぅっとため息をつく。
その様を見たセレネの傍ら、アリスタルコスと瓜二つの大男がプッと吹き出す。
相原はその大男に目線を移した。
「てぇことはあんたがラングレヌスだな?」
「ああ、そうだ。小せえな」
ラングレヌスと呼ばれた大男はアリスタルコスと同様に応じた。双子であって当然似ているが、このラングレヌスの方が言葉少なと書いておこう。必要最小限のことしか言わず、叙情的な文言は口にしない。サーキットレーサーのような上下ツナギ服を着用。
「そろって小せえ小せえうるせえよ。言動まで似てやがって全く。でもいいやよろしくしやがれ」
相原がニヤッと笑って再び八重歯。
そして。
「結局、オレだけか、お前さんとリアル初対面なのは」
こちらも上下ツナギだが、作業服を着た小柄の男性。浅黒く日焼けした肌、皺の刻まれた額。
(つづく)
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