アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-016-
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「通常ルーチン起動シーケンス」
相原は言い、キーボードを押し込んで元通りしまい込み、液晶パネルをポンポン指でタッチ。
「了解」
各員から声が返り、それぞれにコンソールの画面を見つめる。それぞれに船の運航に関わる役割がある。
「順次状況を確認する。ドクターシュレーター。電源状態」
「制御電源安定。主電源準備ヨシ」
「ラングレヌス。機関状態」
「GM(じーえむ:ギフォード・マクマホンの略)サイクル動作正常。液体窒素温度52ケルビン。INS(いんす)予冷装置9ピコケルビン、ゼロ点振動確認。燃料陽電子容量18.87パーセントチャージ。読み替え残容量92パーセント」
「アリスタルコス。防御システム」
「光圧シールド甲板部動作。作動良好」
「了解。透過シールド準備。船体制御系動作正常を確認。探知システム状態報告」
探知システムの起動や監視の担当はレムリアである。
「映像装置、探知装置共に問題ありません。船長殿」
レムリアは言い、振り返り、ウィンクして見せた。
最上段座する相原が堂々として見え、ハッとする。一連のセリフは知ってるから言えるのだろうが、中々サマになっているように思える。
椅子に埋もれる小柄な男で、はんてん姿だが。
男を男らしく見せるのは、シチュエーションと発揮できる能力の方程式なのだろう。
「よろしい。主機関始動!」
「始動します」
相原の声にシュレーターが喚呼で応じる。握っていた操縦桿の奥手側、フタ付きスイッチを押す。
僅かに甲高い音、擬音に直せばキーンと書ける音が聞こえたであろうか。大型のコイルに高周波の電流を与えるため、磁力による振動と音がどうしても生じる。ただ、通常は人体が感知できない高周波で駆動されるため、聞こえるのは始動時の一瞬だけだ。
程なく、ラングレヌスが座る位置でランプが幾つかパパパっと点った。
「フォトンハイドロクローラ始動。主コイル、前段加速器温度所定。機関準備完了」
ラングレヌスが報告し、
「機関準備確認。……ふ、浮上」
相原の声が震えた。
(つづく)
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