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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-017-

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「浮上」
 シュレーターが操縦桿を手前に引く。
 画面が動く。
 暴風が生じて草を吹き倒す。相原を吹き飛ばそうとした暴風の正体である。この船は浮上降下時に空気圧を用いるため、応じた風が周囲に生じる。その〝クローラ〟は、風を起こす機構である。
 船が少し揺れ、不動の大地に座していた感覚が消える。
 浮き上がった。
「浮上しました」
「INS始動」
「INS始動確認」
 シュレーターが返し、振動や騒音の類が忽然と消える。
 図書館のように静かになる操舵室。INS:Inertia Neutralization System。慣性力中和装置。
「INS動作正常」
「光圧シールド透過モード。リフレクションプレート展開」
「リフレクションプレート展開固定。透過シールド作動。フォトンチューブ確立確認」
 その動きを船外から見るとこうなる。まず、船尾がくす玉のように左右に割れ、くるりと回転して裏返しになり、金色のパラボラアンテナに変形する。アンテナ中心には船側から棒が突き出し、伸びる。
 そして金色の光の粉がキラキラと生じ、密度を増して船全体を包み込み隠し、そのまま全体が透明化して見えなくなる。透過シールド。光学クローキング(cloaking)の一種であるが、その原理は、船体が無ければ見えるであろう背景画像を周囲に映し出すもの。
 操舵室に戻る。
「全機能の動作正常を確認した。起動シーケンス全完了。副長復唱せよ。アルゴ発進する」
「発進」
 セレネが答え、相原はコンソール上の赤い蓋を指先で弾いて開き、中のボタンを押下する。
 正面スクリーンから草むらの映像が引き抜かれて消える。まるでテレビカメラを急に動かしたように。
「正面カメラ展開します。船長」
 レムリアが言い、スクリーンの映像が切り替わる。
 映ったのはオリオン座。
 但し宇宙ではない。東天から登ってきた同星座の姿を捉えただけ。
「巡航到達」
 シュレーターが言った。ため息を付きたくなるような、少し安堵した雰囲気が室内に流れた。
 
(つづく)

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