アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-018-
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船が巡航速度に到達した。
但し。
「現在位置」
「はい現在位置60N160E(ろくまるえぬ・いちろくまるいー)。速度70巡航中」
レムリアは船の位置と速度を読み上げた。その意味は北緯60度東経160度。
地理に強い方は耳を疑うであろう。正しい緯度経度を指しているならば、船は今、日本から2千キロを隔てた太平洋上を進行していることになるからだ。ちなみに、ドクターが始動と喚呼してからここまで経過した時間は数秒。上記発進加速のシーンはリアルタイムであり、時間は圧縮していない。
これが何を意味するか。
速度70……この数値が巡航速度であることはレムリアが言ったとおり。ただし、単位は秒速にしてキロ。つまり秒速70キロ。
時速に直すと25万2千キロ。
これが現在の船速である。10分で地球を一周するスピードになる。
すさまじい速度であることは説明するまでもあるまい。〝地球全体と対象とした〟ボランティア。………この速度だからこそ可能なのである。
モニターに〝巡航中〟の表示が出た。
同時に先ほどの慣性力中和装置INSが解除され、わずかだが音が聞こえる。細い弦が唸っているような音で、やや高域寄り。
「巡航確認」
相原は喚呼した。船が安定航行していることを船長として確認した、と宣言したわけである。
「巡航」
メカニック責任者であるシュレーターが答える。
するとセレネが、
「了解しました。では私はこれから探査に入ります。席を立つことを許可します」
と言って、前述のヘッドホン状の機器を装着し、ベッドに横たわる。
セレネがヘッドホンをかぶって横たわる……実はこれが〝遭難者の捜索〟である。
仕組みは次の通りである。まず、船は自動航行で地球を巡りながら飛んでいる。
この時セレネはこうして横になり、超感覚で〝危難の意識〟……助けてくれ……を探している。
そして発見すると、その場所のイメージが彼女の意識に浮かぶ。どの方向に、どのくらいの距離か。
(つづく)
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