« アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-017- | トップページ | アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-019- »

アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-018-

←前へ次へ→
 
 船が巡航速度に到達した。
 但し。
「現在位置」
「はい現在位置60N160E(ろくまるえぬ・いちろくまるいー)。速度70巡航中」
 レムリアは船の位置と速度を読み上げた。その意味は北緯60度東経160度。
 地理に強い方は耳を疑うであろう。正しい緯度経度を指しているならば、船は今、日本から2千キロを隔てた太平洋上を進行していることになるからだ。ちなみに、ドクターが始動と喚呼してからここまで経過した時間は数秒。上記発進加速のシーンはリアルタイムであり、時間は圧縮していない。
 これが何を意味するか。
 速度70……この数値が巡航速度であることはレムリアが言ったとおり。ただし、単位は秒速にしてキロ。つまり秒速70キロ。
 時速に直すと25万2千キロ。
 これが現在の船速である。10分で地球を一周するスピードになる。
 すさまじい速度であることは説明するまでもあるまい。〝地球全体と対象とした〟ボランティア。………この速度だからこそ可能なのである。
 モニターに〝巡航中〟の表示が出た。
 同時に先ほどの慣性力中和装置INSが解除され、わずかだが音が聞こえる。細い弦が唸っているような音で、やや高域寄り。
「巡航確認」
 相原は喚呼した。船が安定航行していることを船長として確認した、と宣言したわけである。
「巡航」
 メカニック責任者であるシュレーターが答える。
 するとセレネが、
「了解しました。では私はこれから探査に入ります。席を立つことを許可します」
 と言って、前述のヘッドホン状の機器を装着し、ベッドに横たわる。
 セレネがヘッドホンをかぶって横たわる……実はこれが〝遭難者の捜索〟である。
 仕組みは次の通りである。まず、船は自動航行で地球を巡りながら飛んでいる。
 この時セレネはこうして横になり、超感覚で〝危難の意識〟……助けてくれ……を探している。
 そして発見すると、その場所のイメージが彼女の意識に浮かぶ。どの方向に、どのくらいの距離か。
 
(つづく)

|

« アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-017- | トップページ | アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-019- »

小説」カテゴリの記事

小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-018-:

« アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-017- | トップページ | アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-019- »