【魔法少女レムリア短編集】東京魔法少女-15-
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「お母様の今の状態は、栄養不良による体温不足です。でもこれは、身体を温め、栄養を充分にとることによってすぐに回復します。真美子ちゃんのためをお思いでしたら、お母様自身が、しっかり食べて元気になさることが第一です。この子だけでもなんて、そんな悲しいことは決して思わないで下さい。子どもに必要なのは家族です。血のつながった肉親です。
母親です。
子どもの居場所は、いつだって、親の、母のそばです」
レムリアは母の手をぎゅっと握って言った。
しかし。
「でも……」
それでも困惑するその姿に、誇り高き母の姿をレムリアは見た。
そして、この親にしてこの子あり。
されど、こちらも“でも……”である。何か口にしてもらわないと大変なことになってしまう。押しつけがましいことはしたくないが。
どうしよう。この親にしてこの子あり。
この子にしてこの親あり。
親と子と。子と親と。
そうだ!
「お母様」
レムリアは笑顔を作った。
「実は、今日、真美子ちゃんに料理の試食を頼んでいるんです。聞けばお母様は“ばんばや”で働いていらっしゃったとのこと。一緒にご批評願えませんか?」
レムリアは言った。
お母さんが自分を見る。
その瞳が揺らぎ出す。次いで輝くものが満ちてその瞳を潤す。
「ありがとう……」
お母さんはまず言い、
「ごめんなさいね……あなたの気持ちを踏みにじるようなことを言ってしまって……お願いします……」
頭を下げる。レムリアは首を左右に振った。そんなことはありません。
「こちらこそお願いします。では台所をお借りします」
立ち上がる。了解得られたところで調理である。調理台はちゃぶ台のある部屋の奥だが、どうもこのところ使用した形跡がない。
(つづく)
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