【魔法少女レムリア短編集】東京魔法少女-16-
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「電気もガスも……水道だけはまだ……」
であるならば。レムリアはまずウェストポーチを探った。その多摩の男に、それこそ秋葉原で買い集めた電子部品で作ってもらった物がある。衛星携帯電話の充電器だ。電気のない場所へ行くからと、太陽電池と市販の充電式単三電池を繋いだものだ。更に、そこに接続して使えと、発光ダイオードのミニランプももらった。
天井の灯具からコードをぶら下げ、ランプをつないでスイッチオン。
「わぁ」
真美子ちゃんが拍手する。高輝度の白色発光ダイオードであり、明るさはかなりの物。小型の蛍光灯程度はある。実際これで診察や簡単な手術をやったことがある。
続いて、お店の食材をまな板の上に広げる。作り方はサイコメトリで把握。必要なのは調理の炎だ。だが、ガスは出ない。
この際魔法に頼るしかあるまい。ただ以前、必要に迫られて火を求めたら、何だか物凄い流れ星が出たことがあって(屋外だから良かったが)、少々、半人前の不安が残る。火事は困る。
どうする?
「お姉ちゃん寒くない?」
腕組みして考え込んでいるレムリアに、真美子ちゃんが手をすり合わせながら訊いた。
その動作にヒント有り。
麺を茹でるだけなので、要は水を“温める”ことが出来ればよいのであって、炎そのものは必要ないのだ。
鍋に水を張る。
「(命なき者に命を与え、我が意のままに操る力を)」
彼女の魔法は、本質的には、月の精霊から力を譲り受け、自らの身体にその高次元エネルギーを導き、更には流れ出る通路とするものである。しかし、水をいじるという行為は、命ある存在(それ自身がエネルギーの流れを有する)に干渉するわけではないため、先ほどのリュック底抜けもそうであるが、このくらいなら月の精霊に力を借りる必要はない。更に言えば、手品のレベルであれば呪文を唱える必要もない。
ちなみに、以前であれば、月の姿が見えない時には、マジック以上のことは出来なかった。この点で、半人前なりに多少は成長しているのかな、とは思っている。
余談はこのくらいにして。
レムリアは指先を鍋に向け、指同士擦り合わせた。同時に、鍋の水同士が擦れ合う旨、思い浮かべる。
摩擦熱というわけだ。実質的に電子レンジと同じ方法である。
(つづく)
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