【魔法少女レムリア短編集】東京魔法少女-18-
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彼女は所属の団体に対して、自分の力について明らかにしていない。しかし、無意識にこれが働き、場合によりそれだけで状況の改善が見られる方もある。このため、文字通り“手当て”を行う彼女のことを、件の団体でこう呼ぶ者もいる。
“ミラクル・プリンセス”。
「温かい……」
お母さんの表情が柔和になった。
「痛くはないですか?」
「ええ……」
レムリアはお母さんを壁にもたれさせた。
「ご批評下さい」
お母さんに割箸を渡し、ドンブリは自分が持つ。
本当はラーメンなんて油っぽいものではなく、消化の良いものの方がいい。胃腸自体の能力も落ちているからだ。
でも何より温かいし、少しずつであれば。
お母さんは麺をゆっくりと口にした。
「うん……ああ、おいしい。麺の茹で加減もちょうどいいみたい」
「本当ですか?」
レムリアは言った。しかし、お母さんはそれ以降箸が続かない。
レムリアはドンブリを置き、お母さんの身体を抱きしめた。
頬に感じる温かい物。そこに込められた、相反する二つの気持ち。
自分、出過ぎたまねをしただろうか。
でも、黙って立ち去れば、その後の経過は推して知るべし。一生後悔抱えて生きて行くのはいやだ。
レムリアはお母さんの気持ちが落ち着くまで待って、身体を離した。
お母さんは不思議そうに自分の身体を見、やせ細った腕や肩を撫でている。
「身体がぽかぽかします。まるで春の日溜まりみたい。あなたは一体……」
「だから魔法使いなんだってば」
真美子ちゃんが言った。ラーメンはすっかり食べてしまい、チャーハンをぱくついている。
「すいません。夢みたいなことばかり……。現実が現実だから、夢想癖がついたらしくて……」
お母さんがうつむく。
「いいえ」
レムリアの否定語にお母さんがハッと目を向ける。
(つづく)
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