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【魔法少女レムリア短編集】東京魔法少女-20-

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「……はい?」
「母体に、命をはぐくむための海が含まれていることはご存じかと思います。この海は海ゆえに月と協調を取って活動し、母体にそのための力を与えます。そしてその力は、命のためにと思った時、必要性を自覚した時、遺伝子の力によって覚醒し、最大限に発揮されます。
 ですから今、お母様が真美子ちゃんのために、とお考えでいらっしゃるなら、この子さえ生き延びれば誰かがなんとか……などとは決して思わないでください。お母様がお母様であることをまず第一に考えて下さい。お母様が真美子ちゃんを思う気持ちと、真美子ちゃんのお母さんを思う気持ちは、相互に手を取り合い、お母様の内在された海に強い、強い力を与え、血潮という名の潮汐となってお母様のお体を巡り、命守るための身体に、本来あるべき姿に戻ろうとします。確約します。必ず、健康を回復することが出来ます。真美子ちゃんをとお思いでしたら、お母様、何よりお母様の回復が必要です。真美子ちゃんを守り、幸せにするのは、他の誰でもなく、お母様自身です。だから絶対、せめて真美子ちゃんだけでも、そんな風には思わないで下さい。真美子ちゃんにとって、母であるあなたは、かけがえのない母なのですから」
 レムリアは一気に喋った。
 世界各地で、貧困にあえぐ地域や被災地で出会った、母子らの姿を思い浮かべながらレムリアは一気に喋った。
 母子とは、人間として、哺乳類として、地球で生きる上で基本にして永遠の姿。
「母が母であること……」
 寄せては返す波のイメージ。
 強く打ち付け、そして砕ける波頭のイメージ。
「私は13です。恋愛経験すらない年端も行かぬ小娘です。その私が母であるあなたに対し、生意気なことを申したかも知れません」
 お母さんはゆっくり首を横に振った。
「そんなことはありません。私が間違っていました」
 静かに言う。
「私が死ぬことで、あらゆる不幸をこの子の元から持ち去ることが出来れば……そんな風に思っていました。でも……違いますね。そうなればこの子はひとりぼっちになってしまう。そしてそれは、私がこの子を見捨てたことになってしまう。それはこの子にとって最大の不幸。この子にとって何も考えず頼れるのは私だけですもんね。まみ、ごめんね。お母さんがんばるよ。身体治してまた働くよ」
 真美子ちゃんは頷き、お母さんに頬ずりした。
 
(次回・最終回)

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