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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-022-

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 その背中に抱いたレムリアの率直な印象は、それこそ〝お兄ちゃん〟の感じである。
 ……あまり年齢ほど大人に見えないと表現したら、気を悪くするだろうか。
 なんか、馴れ馴れしく話しかけたくなる。
「やっぱ難しいなぁ。必要な知識は原子と電子と……」
「簡単に」
「難しいことを簡単に言うほど難しいことは……」
「ごちゃごちゃ言わない。アインシュタインの論文は中学生レベルの方程式と聞きましたが?」
 相原ってからかうと面白そう。
「ローレンツ変換の式か?式はそうだな。平方根があるだけだからな。ちなみにあの式もこの船に関係するぞ。特殊相対性理論のキモだからな」
「えっ?」
 レムリアが目を丸くすると、相原は腕組みし、首を二回ひねった。最も〝あの式〟がどの式か知らないが。
 そして。
「そうだな、まずここから行こう。普通のロケットがどうやって飛んでいるか知っているかい?」
 相原が訊いた。レムリアは少し考えて。
「……火を噴いて……違う?」
「まあそうだな。燃料を燃やし、その爆発圧力で船体を押して飛んでいる。良い?」
「うん」
「それでだ。この船も、やはり何かの圧力で船体を押して飛んでいる。でも超高速で飛ぶため、その〝何か〟は恐ろしく速度が速い。さて何だと思う」
「光子ロケットって聞いたから、光子。でしょう」
「うん、で、光子って何だと思う?」
 光子は英語ではphoton(フォトン)である。
「フォトって位だから、映すとか、それとも別の意味があるの?」
「ヒント、この世で最も速いもの。1秒間で地球を7回半も回ってしまう」
 相原は指をぐるぐる回しながら言い、その回す渦巻きを徐々に小さくし、終いに真上天井に向けて腕を伸ばし、煌々と輝く放電灯を指差した。
「電灯……光。え、ひょっとして光自体のこと?」
「そう正解。光。この船は光の圧力で飛んでいる」
「嘘だあ。だって……」
 レムリアは思わず言った。我ながら子供じみた言葉遣いだが。
「だって、懐中電灯ぶら下げておいても動かないじゃん」
 いくら何でもにわかに信じがたい。
 
(つづく)

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