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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-027-

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 ただ、この光子ロケットの説明においては、レムリアの理解がゴールであるとも言えるだろう。それこそが光子ロケットの最大の特徴だからだ。
「推進剤…」
 レムリアはちょっと考えた。
「推進剤って……光……え?」
「その通りご名答。〝C〟とは光速……つまり光の速度を意味する記号。従って0.9975Cとは……」
「光の速度の99.75パーセント。秒速29万9250キロにして時速10億7730万キロ」
 相原の言葉を、シュレーターがつないだ。
 すなわち、この船の最高速度ほぼ光速に達する。その筋の言葉で亜光速という。
「は……」
 レムリアは言葉がなかった。光の速度で飛ぶ機械。
 光の速度で自分が飛べる。
 にわかに信じがたい。
 相原が補足する。
「この船はスペースシャトルや人工衛星みたいな、地球近くをうろつくための存在じゃない。太陽を遠く離れ、光の速さで何年もかかる、他の星や別の星雲に行くための……まさしく星の海を航海するための船さ」
 宇宙船、なんだからそれであるべき姿なのだろうが。
 少し次元が違った。
「本当に星の海を旅するための……」
「その通り。例えばシリウスに行く。望遠鏡で覗くんじゃない。現実にシリウスのそばまで行って調べる」
 相原が言った。
「プレアデス星団の輝きが美しい。じゃあそこまで行って見て来てしまえ」
 これはシュレーター。
 レムリアは誇らしげな男達を見た。星座の神話のついでに覗いたNASAのサイトや、その日本人達とやりとりした掲示板で見た天体写真を思い出す。光年という単位で語られる、夢にも近いその世界へ。
「この船は……」
「遠い未来、22世紀からの贈り物みたいなものさ」
 男達の言葉に、レムリアは自分が夢見る少女になった気がした。紀元前の昔、錚々たる英雄たちを乗せて黒海の奧へと旅し、その快速で名を馳せた伝説の帆船アルゴ号。
 
(つづく)

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