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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-029-

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「さておき、宇宙航行は無理にせよ、大気圏外を含めた活動までは想定している。宇宙服を積んでることは知っての通りだし、あの帆も大体宇宙で使うものだ」
「帆?あのマストの帆のこと?確かソーラーセイルって」
 レムリアは言うと、相原を見た。
 帆を使って滑空、というのは何度かやったが。
 普通に風を受ける帆ではないのか。
「ああ、こいつの帆は海原を風で進むための帆じゃないんだ。まあ、それも可能だが……本来は宇宙空間で別の風を受けて進むために使われる補助動力」
「宇宙の風?」
 レムリアは首を傾げた。宇宙に空気はないはず。
 すると相原はゆっくり頷いて。
「この船は光で進む。これはいいね」
「うん」
「で、太陽みたいな星の近くへ行くと、強い光の他、放射線やら何やらいろいろビームが飛んでくる。まるで星から風が吹き出すみたいにね。で、そういうビームをひっくるめて〝恒星風(こうせいふう)〟と呼ぶ。星の風だよ。太陽が出すのは太陽風(たいようふう)」
「星の風ってそういうことか。……ああ、じゃあ、あの帆は」
「そう。そういう星の風を受けて進むための帆。専門用語でソーラーセイル」
「へえ……」
 ソーラーと冠されるのは太陽風を受けるから、の意か。
 この船が宇宙空間で帆を広げ、太陽の光に押されて進む姿が容易に想像できる。
 それはおとぎ話のような、ピーターパンの冒頭のような、光景なのであるが。
 それが、現実。
「星の海を光で進む。星からの風があるときには、帆を張って星の風に任せる……」
「その通り」
 目を閉じてイメージを追うレムリアに相原は言った。但し、実際には光子ロケットがメインであり、ソーラーセイルは書いた通りあくまで補助、光子ロケットの故障対策である。ただ、地球のごく近傍で光子ロケットを噴くと光圧で人工衛星等の軌道を妨害する恐れがあり、その場合もソーラーセイルに切り替える。
 
(つづく)

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