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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-030-

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「はあ…」
 レムリアは目を開いた。相原が自分を見ており、その認識が飛び込んできてドキッとする。彼の曰く、夢の最中で夢見たまま、起こされた少女。
 相原はどぎまぎしたように目を泳がせた。
「私……」
 レムリアは自分の認識と感想を言葉にしようとした。この船は……。
 その時だった。
 イヤホンから、擬音で書くならピン、と可愛い電子音が聞こえた。
「あっ」
 3人はめいめい同時に声を挙げた。
 それはセレネからの呼び出しコールである。すなわち。
 救難要請の意識……助けてという心の悲鳴をキャッチした。
 


 
「はいレムリアです。他にドクターと相原さん」
 レムリアはほぼ反射的に答えた。
『セレネです。救難です。複数の悲鳴をキャッチ。家族連れと見られます。転船します』
「了解」
 答えて3人はエンジンルームを走り出す。早急に操舵室へ戻らねばならない。
『皆さんが戻るまでは自動操舵で暫時増速します。加速度と遠心力に注意して下さい』
「了解しました」
 転船。すなわち船が向きを変える。
 船体を大きく傾けながら空中に半円弧を描いてターンし、通ってきた軌道を逆進。
 伴う遠心力を感じながら、操舵室へ戻る。
 シュレーターが走って舵を手にする。INSを併用するような高加速は、全員が操舵室または各個室に所在し、なおかつ船長と舵手が着座していることが実施条件。
 操舵室の大扉が閉まった。
 コンピュータの合成音声……日本語で記す。女声にチューニングしてある。
『INS作動。加速します』
 相原が船長席に戻り、液晶モニタに手で触れると幾つか表示。セレネと同期中……INS作動……自動制御。
 正面スクリーンには地上の風景が流れる。飛行の軌跡が白い点列で示されているが、高速逆行のために白いラインに見える。
 暗闇から少し明るくなり、海から陸へ上陸。時間差からして恐らくは地球を三分の一周。
 
(つづく)

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