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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-031-

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 但しその程度しか判らない。大気中の速度は秒速3千キロまで許容されており、このような緊急時に発揮される。つまり地球一回り13秒程であり、地球の裏側まで数秒で達する。
 加減速能力は最大100万Gを有する。停止状態から秒速3千キロまで僅かコンマ3秒。
 人間の身体は7Gまで耐えると言われる。ジェット旅客機の離陸加速が3Gである。この船の加減速能力はそれらとは比較にならない。従いそのG、慣性力を中和するシステムINSは必須となる。方式は居住区画を高速回転させ、遠心力でGを相殺する。大扉で厳重に区切っているのはそのためである。少し詳しく書くと、遠心力では特定のベクトルを維持するのが難しいため(回転する……すなわち遠心力の働く向きが少しずつずれて行く)、加速を一瞬で終わらせる必要があるが、アルゴ号の光子ロケットはそれを可能としている。逆に言えば必要な加速が一瞬で終わるため、シンプルな遠心力方式が利用可能なのである。なお、光速までアプローチするなどの場合は、小刻みな加速を繰り返す。
『目標同定。減速します』
 船が言い、スクリーンの脇に地図が現れ、赤い「+」の記号を表示。
 正面モニタの映像が停止した。
『停船。INSオフ。制御権を委譲します』
「制御権を掌握した」
 シュレーターが応じ、イヤホンがピンと鳴る。操舵権が舵手に移った旨は船長席にも表示が出る。相原が声に出して確認する。
 スクリーンの光景はほぼ夜である。赤外線から起こした画像に変換すると、茶色く渦巻く濁流の大河が確認できる。
 レムリアは画像の隅々に目を走らせる。この川で遭難事故があった、ということだろう。案外山奥だ。
「高度海抜650メートル。川面まで15メートル。天候は快晴。時刻は現地時間1800(いちはちまるまる)」
 レムリアは報告した。
 
(つづく)

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