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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-032-

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「夜間につき透過シールド解除してもよろしいかと」
「了解。透過シールド解除を許可します」
「透過シールド解除した」
 セレネが提案し、相原が応じ、アリスタルコスが操作する。
「現在遭難者を捜索中です」
 セレネは言った。相原がトラックボールで地図の縮尺を変える。欧州、アルプスの山懐と知れた。
「晴れているのに鉄砲水?」
 レムリアは思わず呟いた。場所柄鉄砲水自体はあり得ると思うが、空を見る限り豪雨の痕跡は感じず、時季的にも雪には早い。
「氷河が溶けて山津波、じゃないのか?70年代だか一度やったろ。それにアルプスの氷河が溶けて失われてるって話は日本にいても聞くぜ」
「温暖化、か」
 もたらす干ばつや高温が、いわゆる〝南北問題〟における貧困地域に影響を与えていることは肌身で知っていたが。
 〝北側〟にも影響が出始めたのか。
 超感覚が反応する。
「あっ」
 それはセレネも同時であったようで、思わず互いに顔を見る。二人同時ということは、どちらかの思い違いや認識ズレは無い、ということ。
 拾ったのは驚愕であり、及び同時に発せられた強い思いの残照である。……残り香・移り香という言葉があるが、それの記憶版と解釈されたい。驚愕と恐怖の故に、その場所に〝思い〟の痕跡が残ったのだ。それは突然の襲来、恐怖、そして疑問……なぜ・どうして……。
 間違いない。遭難者は鉄砲水に流された。
「遭難者はこの川に流されたようです」
 セレネが声を出した。
「了解。本船は流れに沿って下流へ動く。頼むぞテレパス」
 シュレーターが船を水面ギリギリまで下ろし、濁流の行く先を追う。
「生命赤外線センサ、合成開口レーダ作動。レーダは全波長スキャン」
 相原は技術による探査を指示した。
「はい。人体検知、SAR(合成開口レーダの英語略称)作動。レーダは全波長利用モードにセット」
 
(つづく)

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