アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-033-
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「……でも何故SAR?」
振り返って相原に意図を訊く。それは輪郭を見出すために使うと最初聞いたが。
「水面下や地下でも浅ければ拾って来るからさ」
相原は言った。レムリアは納得し、向き直って、
画面の有様に凍り付いた。
滝である。その流れ落ちた中に船のセンサが何かを見つける。形状同定がなされ、ワンボックスタイプの車であるとの判定が出た。ただし水面下であり、上からは泥水の色もあって見通せない。
流れ落ちるその直下でくるくると回転している。コーヒーにミルクを垂らしてカップの脇からそっと吹くと、ミルクが渦を巻くが、その縦型バージョンが車を巻き込んでいる。
ここから救い出すことになる。通常の救助隊ならどうする。奇蹟を待つか、求めて天使に祈るか。
自分たちは奇蹟そのものをもたらすために。
「意識はあります」
レムリアはまずは安堵した。状況は不明だが乗員は生きている。4名である。
しかし残された時間は長くない。これまででさえ、長時間の回転と低温に晒されている。車中の空気も酸素が薄い。以上看護師なりの知識と密室からの類推。
「皆さんのご意見を伺います」
セレネが言った。各人のアイディアを協議して方法を決める。このプロジェクトの流儀。
「まず水を一時的でもいいから止めないと何も始まらない」
相原が言った。
「ダムを作るということですね」
セレネが同調し、周辺地形をスクリーンに投影する。
滝であり崖があり岩がゴロゴロ。
「切り取って……」
そこでレムリアは思いついた。氷河が溶けてと相原は言った。
「上から氷を切り取った方が早くないでしょうか。やがて溶けるので環境負荷も少ないでしょうし」
「それ行こう」
相原が即断。レムリアは更に、
「それと、中の人たちに呼びかけたいのですが」
今すぐ助けると伝えて元気づける。自分のテレパシーは相手を拾えるが、送り込む能力を持つまでには至らず。
(つづく)
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