アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-034-
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セレネも形而上的呼びかけには否定的。現実離れしていて逆に“天国からの呼びかけ”と取られる。
必要なのは“助かるという意志・生きようとするモチベーション”。
「カーオーディオに干渉するか」
「同時には無理ですよ」
セレネが言った。氷河……すなわちアルプスの標高高い場所まで取りに行く。船のコンピュータから電波を飛ばして回路に干渉する。
船は二つに分けられない。
すると。
「俺に約束の力を頼む」
相原はレムリアを見て言った。
魔法を掛けろ。その船長の最たる力、電磁波干渉能力を身に付けて使おうというのだ。
「はい」
レムリアは頷いた。的確さへの驚きと……少し笑みが出てしまった気がするのは何故か。
自分は、不謹慎なのか。
「降りるか?」
相原が腰を浮かせる。
「ええ」
「判った。我々を下ろしたら皆さんは氷でダムを……ドクター操船、セレネさん指揮を代行下さい」
「おうよ」
「承知しました」
「承ったぜ相原船長!」
アリスタルコス、セレネ、シュレーターが応じ、船は一旦、河岸へ降りた。
乗降スロープを伸ばす時間も惜しい。レムリアは相原と共に甲板から飛び降りた。
船が即座に浮上。
月を背にしてレムリアは立った。
「行きますよ相原さん」
息を吸う。変身の術式で被術者あり。
……実は使ったことがない。自分が何かに化けたことは幾度もあるが。
躊躇の暇なし。
「我らを見守りし月の精霊よ」
声に出して呼び、出来る限り一瞬で月の方を振り返る。月に対する動作であることを示すためだと言う。次いで両手を胸の前で祈る形に組んで、まっすぐに月を見据える。
「我が名において、我が友に、聖なる力を授けたまえ……」
依頼事項の主題を述べる。ここまでは意図の開示であるため使用言語の制約はない。レムリアは相原に判るように日本語を使った。
続いて呪文を唱え〝ありさま〟をイメージする。自在に力を操る船長の姿を相原に重ねる。なお、呪文自体は文字にとどめるだけでも効力を発揮するとのことなので、悪影響を考慮し、ここに記録することは控える。
(つづく)
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