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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-035-

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 呪文が終わる。目を閉じ、ゆっくりと月に向かって両の手のひらを向ける。両の手のひらで月明かりを受ける。これで、精霊が申し出を受け入れた場合、その力はまず月光に重畳され、彼女の両手に宿る。月は半径1738キロの岩の塊であるが、術書に曰く、その光と影の綾なしは冥府と天界の接するところという。成就したい願いは光の面を用いて天界の精霊達に願い出、妨げたい願いは影の面を用いて冥府の王に申し出る。一般に前者が魔法であり後者は魔術である。前者は求めれば与えられるが、後者は応じた対価で引き出す。
 少し時間が掛かっている。この時間を彼女は〝審査〟と呼ぶ。求めれば与えられるが、基準は存在する。値する申し出か否か。自分と、相原双方が対象だからだろう。
「まぶし……」
 相原が呟き、程なく、手先に雷が落ちたようになり、一回震え、熱くなる。
 〝力〟が来たのである。熱いような痛いようなその感覚を、歯を食いしばって耐える。肉体次元と形而上の次元とが自分の身体の中で接しており、エネルギーの落差が肉体に負荷を与える。
「手を、こっちに向けて…」
 レムリアは言い、相原を振り返った。
 有様に相原が目を剥き、メガネの向こう、瞳孔に有様が映し出される。
 地平より顔を出して間もない、赤っぽい月の光を背後から浴びながら、ゆっくりと振り返る美しい娘。
 目を半開きにし、両腕を伸ばし、風の余韻に短い髪の毛を任せるその姿は、さながら古代のシャーマンである。なまじ外見が日本人と変わらないだけに、その印象は卑弥呼(ひみこ)、或いはその跡継ぎの娘、壱与(とよ)という名前を思い出させる。それはとりもなおさず、魔法の担い手と神代の巫女達に洋の東西を越えて形而上の共通点があるからに他ならない。
 
(つづく)

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