アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-041-
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『承知した。地上、耐閃光注意』
アリスタルコスの姿が船の上、甲板にあった。
ブルーの光条が地へ走り、裏返った車の後端部を、鮮やかに切り落とす。
車中の水圧に押されて切断された部分が倒れ、水と人が吐き出され、転がる。
レムリア達が駆け寄ると、夫婦とおぼしき若い男女が抱き合っており、良く見ると二人の間に子どもが1人挟まっている。
子どもだけは守ろうと夫婦が行動した結果であろう。白い肌に金髪。車のナンバープレートからドイツの人たちと推察。いずれも意識はない。
手遅れか。まさか。子どもは?
解こうとして解けぬ二人の手指に、レムリアは息を呑む。
自分たち、この絆に応えてこそ。
その時。
『氷山が割れます』
すなわち、ダムが決壊し、大量の水が来る。
車の人々を早急に動かす要あり。
「船を下ろせ。オレが一家丸ごと持ち上げるから、お前たち頭と足を支えろ」
ラングレヌスが操舵室と二人に指示する。人間三人一度に運ぶ。
『了解』
シュレーターの回答があり、大人二人に子どもが一人、合わせて150キロは下らないであろう、ラングレヌスが気合い一閃抱え上げて歩き出す。頭部と足がだらりと下がるので、相原が足を、レムリアが頭部を支え、三人がかりで移動。
船が降下する。
滝の上で轟音。氷山が二つに割れるのが見えた。
堰が切れた。盛り上がりあふれ出すその有様はさながら津波。
間に合うか。
「船体を横倒しにしてくれ!直接甲板に上がる」
『了解』
相原の機転にシュレーターが答え、降下した船は転覆の如く船体を倒す。
甲板が壁のように立つわけだが、その壁に貼り付くように寄りかかり、家族を〝立て掛け〟自分たちも舷側に並ぶ柵の柱に足を載せて立つ。
「船体復位(ふくい:元の位置に戻すこと)。浮上!」
『了解!』
滝の上から氷ごと大量の水が落ちてくる。氷の土石流。
(つづく)
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