アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-047-
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「正直腹減ってた。形いろいろだな……歯ごたえや内部構造や味も様々……日本の菓子のデキが良過ぎなだけとは聞くけど、そっちの量産品ってこんなもん?メーカーどこだい?」
ひょいひょいつまみながら、相原は感想を言った。
「……すんません、こちらレムリア製菓工場粗雑で」
言ったら、相原の目と口と手が止まった。
その表情が滑稽でレムリアは吹き出す。格好付けたかと思えばマンガのように。
そういう、人なのか。
「お手製?」
レムリアは頷くのが精一杯。
「そらごめん。笑いすぎると舌噛むぞ」
「だって……」
救助活動で子ども達とコミュニケーションするのに最良のとっかかりアイテムは食べ物で、ある程度の日持ちを考えるなら焼き菓子と考えた……と説明するのにレムリアは相当苦労した。
「船乗る時も言った気がするが、普段どんだけ笑うの我慢してんだ君は」
その言葉にレムリアはハッとした。
そういえば……ここまで笑い転げたのっていつだろう。
怖い気持ちが生じる。この手の極端な感情のブレは抑圧に起因すると知識が教える。
どこか、無理してる?自分。
「……音楽掛けていい?」
落ち着け。
「もちろん。どんなの聞くんだい」
「トルコのポップス」
レムリアはベッドに立ち上がり、天井近くの棚に置かれた小型CDコンポの電源を入れた……つもりであったが。
「あれ?……これ接触悪いんだよね」
電源ケーブルのプラグの根元をぐりぐり動かす。小さくパチパチ音がする。
「ストップ触るな!」
相原の声はちょっと驚くほど。
「えっ?」
「ヘタに触ると死ぬぞ。断線してるじゃないか。この船の電源は200ボルトだろうが」
家庭用コンセント……に代表される商用電源の電圧は、日本では100ボルトであるが、これは世界的には少数派である。アルゴ号は欧州系の仕様に基づく。むろん、電圧が倍の方が当然危険度は高い。仮に同じ条件で感電したら、人体が受ける電力は4倍になる(電圧2倍電流も2倍で4倍)。
(つづく)
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