アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-048-
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「直すから待ってろ。……シュレーター博士。回路テスタとワイヤストリッパとはんだごてを借りたい。……え?マルチメータすか。テクトロとかフルークのハンディ?……ああ日置(ひおき:日本の測定機器メーカ)っすか、充分です。場所は?……銃器連中と同じですね。了解」
相原はイヤホンマイクでシュレーターとやりとりしつつ、ベッドの上に上がり、CDコンポのプラグを抜いて棚から下ろした。
そのまま部屋を出、数分して色々と用具を持って戻ってきた。がらがら床に置く中で目立つのは、ヘアカーラーの様な道具、はんだごて(半田鏝)。はんだとはスズと鉛の合金を言い、熱を加えて金属同士の溶接に用いる。現代電子産業における部品取り付けの基幹技術であり、こてはその加熱用の道具である。相原が手にしているのは電子工作用のペン型だが、こての名の通り、大面積の溶接用に大電力のヒータを備えた大型の物や、バーナーなどで加熱して用いるタイプもある。
「こんなんで使ってたら火ぃ噴くぞ。お前さんこれプラグを持つんじゃなくて、ケーブル引っ張って抜いてないかい?」
相原ははんだごての電源をコンセントにつなぎ、ミニキッチンに立ち、こて先洗浄用のスポンジに水を含ませて戻ってきた。
「はい。コード引っ張って抜いてます。ご明察です……」
レムリアはしょぼくれた。気にするなと言われても、この人に迷惑掛けてばかりなのは事実。
「自分ちの家電品でもやってるのか?」
「ううん、パソと新しく買ってもらったコンポがあるけど差しっぱなし」
「なら、明察ってコトバ知ってたから許す」
相原はケーブルを手探りで揉み回し、断線箇所を特定すると、慣れた手つきでハサミの親玉みたいな道具(ワイヤストリッパ:被覆剥き)で、断線部分の被覆を剥がした。次いで剥き出しにした電線同士をはんだ付けで接続し直し、手のひらの測定器で電気導通を確認して、ビニールテープで巻いた。
(つづく)
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