アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-049-
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「応急処置な。熱収縮があればよかったけど……」
ケーブルをコンセントに差して電源オン。CDが回転を始め、女性ヴォーカル。
「あ、直った。すごい」
ベッドから降りて覗き込む。ドジ娘の失敗を「しょうがないな」と特殊な技術で助けてくれる男の子。それはティーン向けの他愛もない物話で良く見るエピソード。
なのだが、実際目の前でやられてみると何か不思議。いや、原理原則に則っているだけ、なのは理解するが。
魔法みたい。魔女の自分が言うのもあれだが。
何だろう、この面映ゆくて。
「別にすごくないです。普段から学校でこんなことしてます。鉛入りの有毒ガス吸ってます。自分にとって単なる日常です。で、これを子ども達にあげるから毒味しろって?」
相原は話題を変え、再びクッキーをかじった。
「うん」
「味はいいんじゃね?ただ、もう少し大きめに作った方がいいように思う。このサイズだと直接喉まで行っちゃいそうだし、嚥下(えんげ)障害とかリスク怖いだろ」
相原は幼児向けのビスケットを例に出し、そのくらいで作っては?と加えた。
「ああ、それはそうだね。普段から食べてないと飲み込む力も弱いし……」
レムリアは応じた。嚥下障害とは飲み込んだ食べ物が胃に行かず肺の方へ入り込むこと。
そこで気付いたこと一つ。この男の自分への対応は、年少者に対する配慮はあるが、コドモ扱いではない。
アルゴのクルーは当然自分を一員として見てくれてはいるが、同時に庇護と制限を加えるべきコドモという扱いを感じる。明言されたわけではないが、その線引きはあくまで保持していると感じる。最も、コドモが己れに対するコドモ扱いを見抜くのはコドモの本能という説もあるが。
すると。
「え?オレ鼻毛でてる?」
見つめるレムリアの目線を捉えて、相原は自らを指さした。
(つづく)
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