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【理絵子の小話】出会った頃の話-13-

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 彼、の差し金か、彼、対策か。
 解錠されて彼女が出てくる。
 ただその引き戸のカラカラという音は、襖と言うよりアルミサッシ。
「大げさだろ?プライバシー保護のお歳でしょってオカンの仕業」
 そのオカン、母殿に送られて玄関から出ると、庭の向こう門扉は開けっ放し。
 そして、池には感じた通り吸い殻ひとつ。
 桜井優子が動くより先に理絵子が拾うと、桜井優子は庭に回ってちり取りを持ってきた。
「どうして、こんな風になっちまったんだろうな」
 呟くが、そこから先を言うわけでは無く。
 理絵子はただ彼女の手をそっと握った。
 女の子同士仲良しは手を繋いで……中学高校でもまま、見られる。
「忘れていたのを思い出した気持ち……自分、こんなことしたこと無いんだけどな」
 門扉から出ると、バイクは置いたままだ。
「イタリア製なんだぜ。信じられるか?」
 桜井優子は言うと、何と、そのバイクにまたがってジャージのポケットからキーを出し、イグニションに差した。
 スタータをキックしてエンジンを掛ける。
 え?
「乗れよ。無免許運転1年やってりゃうまくなるってな」
 違反がどうのは野暮というものだろう。心の破滅は命に直結。人命救助は法より優先する。
 はず。
「私の父親、警察官」
 理絵子は後席にひらりとまたがり、桜井優子に抱きつき、間に学生カバンを挟んで言った。
「そういや組織犯罪に黒野っているな。あれってお前のオトンか。スカートはケツの下にしまえ。巻き込まれて脱げて死ぬぞ」
 車輪付き原動機は風となり、住宅街を駆け下り、
 どこへ行くかと思ったら、学校に向かって坂を上り、前述喫茶店〝ロッキー〟の前に止まった。
 え?え?
「ここってウチのガッコ禁止だっけ。お前が入ったら大問題か。でもまぁいいよ。ガッコがお前にガタガタ言ってきたらオレがぶっ飛ばす」
 桜井優子のその言は目的地がここであることを意味した。すなわち友達として紹介したいというのは。
 喫茶店のドアが開いた。
「こいつは驚いた」
 マスターはバイクと二人を見て開口一番。
「ああ、マサさん、こいつは……」
 桜井優子が紹介しようとして、
 
(つづく)

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