【妖精エウリーの小さなお話】花泥棒-17-
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高位の天使族がそんな姿、と聖典にあります。ですが、聖典の言うような近づきがたい雰囲気はガイア様にはありません。むしろ、日だまりの温和に近い感じでしょうか。
目が慣れてくると、漂うような髪の毛と目鼻立ちが確認できます。但し、なにぶん光り輝いていますので、輪郭とか肌の色とか、着衣とか、具体的に書くのは難しいのですが。
「天使様」
かおるちゃんの感想は至極もっともと言えるでしょうか。
「あなたが、かおるちゃんですね」
ガイア様の口調は〝おっとり〟と言いますか、ゆっくり、たゆたうようです。
ちなみに、声と言うより、超常の手段で空気を震わせて、というのが恐らく正確な表現になります。
「ジョンは、かおるちゃんのそばから、離れなくてはなりません」
ガイア様は言いました。本当の優しさは婉曲な表現で誤魔化すことではありません。
「どうして?」
「ジョンは、かおるちゃんが、お母さんを支えて行ける、女の子になれるまで、無事に、見届けました。かおるちゃんと遊んで、かおるちゃんを守って、かおるちゃんに元気をあげてきました。かおるちゃんは、ジョンからたくさんのたくさんの、勇気と、元気をもらったでしょう?」
「うん」
ガイア様のおっしゃる言葉に凄い意味が含まれていることに私は気付いてしまいました。
ジョンは自らの生命力を分け与えてかおるちゃんを支えていたのです。
ジョンが生きて行くための力はかおるちゃんのそれとなり、結果、ジョンは天へ召されることになったのです。
それが、ジョンの使命。
いえ、犬たちの人間に対する使命と言えるかも知れません。
「ジョンは、かおるちゃんよりも、もっともっと苦しい状況にある別の子どもさんのために、旅立たなくてはならないのです。ジョンを行かしてあげてはもらえませんか。私からのお願いです」
「でも……」
「お別れは辛いことです。その代わり、今度はかおるちゃんが、ジョンのように、誰かを助けてあげて欲しいのです。その一番最初が、かおるちゃんのお母さんです」
「うん……」
かおるちゃんは頷きましたが、決して納得の上でという感じではありません。子どもを言いくるめて反論できない状態にして無理矢理頷かせた。そんな感じを受けます。
もちろん、ガイア様はそんなことはされません。
(つづく)
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