【妖精エウリーの小さなお話】花泥棒-18-
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「いま、かおるちゃんのお母様は、かおるちゃんに放課後を児童館で過ごしてもらおうと考えています。夜のお仕事を辞める代わりに、お昼をもう少し長く働こうと考えてらっしゃいます」
「えっ?」
かおるちゃんに不安がよぎったのが判ります。
他の子と一緒にいても、誰かと遊ぶわけでは無い。
選んだ孤独と、見せつけられるひとりぼっちの違い。
「やだ」
「それは、何がいやなのでしょう。お母様と離れてしまうこと?児童館へ行くこと?」
「どっちも」
それはかおるちゃんの本音。しかし。
「でも……そうすると、お母さん夜にいなくなっちゃうんだよね」
かおるちゃんは気付いた事実を口にしました。
〈その児童館に犬はいないのか?〉
男爵が言いました。
〈いるはずだよ。散歩の途中で見た〉
ジョンが答えました。それでかおるちゃんも思い出したようです。
「ああ、あの子……」
〈あいつは、捨て犬だよ。しかもひどく人間にいじめられた……僕を見て羨ましいと言ってた。誰にも懐かない。でも、かおるなら反応が違うと僕は思う。僕はかおるに、犬の気持ちがどうやったら判るか教えたつもりだ〉
「エウリディケさん」
ガイア様が私を呼びました。
「はい」
とはいえ、おっしゃるであろう内容は予想が付きます。
妖精の主たる任務は生き物たちの相談相手。
すなわち、コミュニケーション能力。
「ええ、少し、その魔法を、かおるちゃんに」
「承知いたしました」
私は頭を下げて片膝を床につきました。
「よろしくお願いします」
「魔法?」
かおるちゃんが私に尋ねました。
「そう。動物たちとお話しできる魔法。ただ、約束が一つ。誰にも、お母さんにも、魔法のことを内緒に出来るかな?」
(つづく)
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