アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-050-
←前へ・次へ→
「へ……」
「遠慮すんなよ。最低限、醜態晒さないってのがレディに対する礼儀だからな。外見キモいのはオタクの名折れ」(キモい=気持ち悪い)
その瞬間、レムリアの中で何かが〝がちゃん〟と言った。
壊れたのか、動いたのか、何かスイッチが入ったのか、それは判らぬ。
ただ、一つ明らかなのは、
この男に対して持っていた恐縮の気持ちは、
年上、見ず知らずに近い人を面倒に巻き込んだという引け目は、
気にせず捨て置いて良い。ごめんなさいとか、ありがとうとか、「言わなきゃいけない」と、カウントしてため込んでいた物、チャラにしていい。
そういう余所余所しい他人関係、オトナとコドモのやりとり、必要ない。
何故なら。
「なんか友達というか、従兄弟の兄ちゃんと話してるみたい」
レムリアは、言った。そう、これは友達の始まりだ。
10歳近く離れているのに。
相原はフッと笑い、
「それだ、君の抑圧は」
「えっ……」
言われてハッとする。無自覚への示唆……図星という奴だ。
そんなことないもん……言い返そうと思ったが、かも知れないという分析が、その言葉を押し返す。
通ってるフリースクール。フリースクールの故に登下校自由であり、級友と戯れてという感じではない。
参加してるボランティア団体。医師や宗教関係者というオトナだらけの中にあって、コドモのスタッフは自分だけ。
自分が話す子どもの多くはマジックショーの〝観客〟であって、殆どがその場限りの一期一会。
自分に、年齢相応の友人関係、及びコミュニケーションが希薄なのは確かかも知れない。
「背伸びしてるとは言わないよ。ただ、歳の割に責任背負いすぎな気がする」
看破、であった。
「魔法使いの心理を理解できるカウンセラーがいたとはね」
レムリアは言い、力が抜け、相原の真似してカーペットの上にぺたりと座った。
「そうでもない、一般論だよ。どうせ誰も……そうやって無意識に抱え込んで行くんだよな。解決できるのは自分だけしかいない。ってね」
そのセリフにレムリアはしゃちほこばった。
(つづく)
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント