アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-051-
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髪の毛が逆立ったような気がした。と書いても、過言ではないほどの衝撃。
なぜなら。
その、拉致された少女を、レムリアは船で相原の前に降りたって彼に託した。
それが事実であると証明できるのは、文字通り〝どうせ誰もいない〟そのもの。同じ構図。
そして、彼は、最も信じてもらいたい相手に、信じてもらえなかった。
「お前みたいな女の子好きだぜ」
さらりと言われて、どきっ、とした。
同じ構図に対して何か言おうとしたのだが、どこかへ行ってしまった。
それこそテレパシーで先読みされ、体よくはぐらかされているような気がする。
「お年頃の娘からかうとひどい目に合うよ」
頬が赤くなるのを自覚するが、愛の告白ではあるまい。気に入ったという奴だ。でも、そうと判っていても人格肯定されるのは少し嬉しい。多分、〝魔法のお姉ちゃん〟に対する男の子の幼い思いとも、オトナのいう〝いい子だね〟ともニュアンスが違うから。
やはり自分はカウンセリングされたのだと納得せざるを得ない。人と違う目標を抱き、思春期と共に祖国を飛び出し、フリースクールの生徒になって今に至る。
「純化(じゅんか)ってコトバがあるんだよ、オレらのギョーカイでね。良い悪い色々混じった物から良いところだけ地道に集めて非常に質の高い物を作る。君の性根や行動にはその方向を感じる。大事にしな」
「うん……」
レムリアは小さく頷いた。意外なことで褒められた幼い女の子の気分。
イヤホンがピンと鳴る。
「来たっ!」
二人は部屋から出た。
〝EPIRB〟と呼ばれるシステムがある。Emergency Position Indicate Radio Beacon:非常位置指示無線標識。タイタニックで一般化したモールスによるSOSの代わりに導入された船舶用の仕組みである。地球周回衛星コスパス・サーサットを介して遭難位置情報を発信する。カーナビゲーションで知られるGPS応用の一種で、当然全地球規模。
「南極」
(つづく)
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