« アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-057- | トップページ | アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-059- »

アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-058-

←前へ次へ→
 
「縁起でもねぇこと言うな……焦るだろうが」
 相原は言った。彼の抱いた少しの不快。悲劇を想像させるからやめろ。
 すなわち、彼もスコットの結末を知っている。
 だから、彼は急いだ。
 ほんの少し、結果を急いだ。
 レムリアは気付いたが。
「あっ……」
 大きな火の玉。
 小爆発と言って良い音がして湯気が盛大に生じた。
「しまっ……」
 相原が言いかけ、その姿が湯気に見えなくなる。
 それが〝僅かに急いだ〟結果であった。レムリアは湯気の中に飛び込んだ。
 自分に何か手伝える?
 しかし。
「バカ!何でここにいるんだ!」
 彼の顔が湯気から現れ、そういう声が聞こえ、
 ドンと胸を突き飛ばされる感触があったかと思った次の瞬間、そのまま相原の身体が自分の上に覆い被さって倒される。
 仰向けに氷の上にひっくり返ったが、その寸前、彼の腕が自分の後頭部の下に差し込まれたのが判った。
 ガシャンと大きな音がして、自分たちを大きな機構体が拘束する。
 相原が氷を一気に溶かしすぎ、氷中に倒立していた太陽電池ソリが剥き出しになり、倒れ込んできたのであった。
 相原はレムリアを突き飛ばして逃がそうとしたが、僅かに及ばす、自らソリにのしかかられ、レムリアの上に倒れ込んでしまった。
 ただその寸前にそれに気付き、腕を差し入れた。
「レムリア……レムリア……ああオレはなんてことを」
 ……囁くように声が聞こえ、相原は身を起こそうとしたようだが、そのまま途絶し、力が抜ける。
Argo3
「大丈夫かお前ら!」
 大男達がすぐさま助け出してくれた。
 ソリが持ち上げられ、裏返される。
 太陽電池パネルは屋根板のように〝へ〟の字にセットされており、その屋根の下から眼鏡姿の若い娘が見つかった。ラングレヌスが彼女を引き出し、次いでアリスタルコスがソリの中からテントとおぼしきシートを引きずり出して氷上に伸べ、娘を横たえる。
 相原は動かない。
 
(つづく)


|

« アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-057- | トップページ | アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-059- »

小説」カテゴリの記事

小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-058-:

« アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-057- | トップページ | アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-059- »