アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-058-
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「縁起でもねぇこと言うな……焦るだろうが」
相原は言った。彼の抱いた少しの不快。悲劇を想像させるからやめろ。
すなわち、彼もスコットの結末を知っている。
だから、彼は急いだ。
ほんの少し、結果を急いだ。
レムリアは気付いたが。
「あっ……」
大きな火の玉。
小爆発と言って良い音がして湯気が盛大に生じた。
「しまっ……」
相原が言いかけ、その姿が湯気に見えなくなる。
それが〝僅かに急いだ〟結果であった。レムリアは湯気の中に飛び込んだ。
自分に何か手伝える?
しかし。
「バカ!何でここにいるんだ!」
彼の顔が湯気から現れ、そういう声が聞こえ、
ドンと胸を突き飛ばされる感触があったかと思った次の瞬間、そのまま相原の身体が自分の上に覆い被さって倒される。
仰向けに氷の上にひっくり返ったが、その寸前、彼の腕が自分の後頭部の下に差し込まれたのが判った。
ガシャンと大きな音がして、自分たちを大きな機構体が拘束する。
相原が氷を一気に溶かしすぎ、氷中に倒立していた太陽電池ソリが剥き出しになり、倒れ込んできたのであった。
相原はレムリアを突き飛ばして逃がそうとしたが、僅かに及ばす、自らソリにのしかかられ、レムリアの上に倒れ込んでしまった。
ただその寸前にそれに気付き、腕を差し入れた。
「レムリア……レムリア……ああオレはなんてことを」
……囁くように声が聞こえ、相原は身を起こそうとしたようだが、そのまま途絶し、力が抜ける。
「大丈夫かお前ら!」
大男達がすぐさま助け出してくれた。
ソリが持ち上げられ、裏返される。
太陽電池パネルは屋根板のように〝へ〟の字にセットされており、その屋根の下から眼鏡姿の若い娘が見つかった。ラングレヌスが彼女を引き出し、次いでアリスタルコスがソリの中からテントとおぼしきシートを引きずり出して氷上に伸べ、娘を横たえる。
相原は動かない。
(つづく)
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