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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-064-

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「風じゃねえ。地下空間を自然の風が吹くもんか。空気押しのけながら何かデカイのが来るんだい。地下鉄の風と同じだ。全員ストレッチャーのロープにつかまれ。ドクター、ウィンチせず船ごと浮上してくれ!」
 しかし、ラングレヌスだけは例のハーケンで降ろした縄梯子の方につかまった。
「ラングさん!」
 意図を図りかねてレムリアは叫んだ。
 叫んでから意図を感じ取った。
「ああ気持ちいい響きだぜ女の子に心配されるのは……何来るか知らんが、まさか中に残ってる奴がいるとは思わねぇだろうよ。心配するな行け」
 つまり、不死身性にモノを言わせて事態を見届け、裏を掻く。
 聞こえてきた水音は鉄砲水の様相。空気を押しのけて風にしているのは大量の水。
「ヒャッハー。サーフィンなんか何年もやってねぇぜ!」
 後で聞いたが、ピンチに軽口という悪いクセをクルーに伝染させたのは、どうやらこの不死身男であるらしい。
「ドクター、構うな上げてくれ……奴の生命力はルガルー(人狼)並だ」
 アリスタルコス。
「でも」
「船外所定位置。浮上よし」
 相原の声が非情に聞こえた。もちろん正しい判断と判っているし、彼は死にはしないであろう。
 だが、〝生きていて当然〟というこの2人の言動が何か引っ掛かるのだ。
 それとも、心配する自分が変なのか。
 冷静すぎる。強すぎる。
 そこで相原に手を握られてハッとする。
 目を向けたら、彼もフードを外した。
「冷たいな、怖いか」
 首を横に振る。そういうわけでは。
 すると夏の突然の豪雨のようにザーと水音が聞こえ出し、氷床下河川の水量がにわかに増える。程なく津波の如くとなり、電気船が飲み込まれる。ショートでもしたか青い火花が散って見えなくなる。アルゴ号はロープを巻きながら高度を取り、
 そして、ラングレヌスが水中に隠れる。
 水は電波を通さず、彼との通信は途絶した。
 
(つづく)

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