アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-067-
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ラングレヌスはそのジャンプでは届かぬ位置にいるが、シャチはジャンプを繰り返し、攻撃を止めない。
「あきらめない。おかしい」
レムリアは疑問を呈した。シャチは海の猛獣と言って良いが。
闇雲な狩りはしない。無理かどうかの判断が出来る知性は充分に有する。その頭脳の程は水族館のショーでおなじみ。
されど幾度か繰り返したら、さすがに無理と判断したか、水中へ戻ってそのまま出てこない。
「ん?」
相原が何か気付いたようだ。
レムリアはすぐに自らのコンソールに走った。
「画像?10秒位戻せばいい?」
ターゲットスコープの画像はミッション終了まで録画される。スコープが稼働中はすなわち救助活動中であり、ヒントの抽出はもちろん、後々証拠画像にもなり得るからだ。
「最後のジャンプ。背を向けて落ちるところをスローで」
「はい」
更にコマ送り。ストップモーションに映っていたのは。
「目をズームアップ」
眼球ではなかった。
「これ……」
ハリセンボンの表皮のように、小さなトゲ状のものがびっしりと並んだ、何か機械がはめ込まれている。
「ロボット?」
レムリアは言ってぞくっとした。海生哺乳類を偽装した大型攻撃ロボット。
「フェーズド・アレイ・レーダにそっくりなんだが」
ドクターシュレーターはそう言って。
「JSDF(日本の自衛隊のこと)が使っておろうが」
相原がすぐ反応。
「また日本かよ。生体兵器ってか?南極に日本がいても不思議じゃないからな。……でも博士悪いがそれは違う。こんなもん西側ならゴロゴロしてるし、仮に日本のロボットだったら一撃必殺。今頃ラングは食われてる」
相原は画面に〝Robot〟と書き、気付いたように顔色を変え、その文字をマルで囲んだ。
それは相原の頭の中であろう、遠く小惑星に〝自らの判断〟で着陸を繰り返す探査機(※)のイメージが浮かぶのを、レムリアはテレパシーで拾った。※2010年に地球へ帰還した「はやぶさ」のことであろう。
(つづく)
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