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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-070-

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 その他の出血箇所には“ソフラチュール”を貼り付ける。消毒薬を染み込ませたガーゼであり、受傷箇所の保護に使う。応じて眼窩の中は白いそれで埋まる。
「疲労を感じます。激しい疲労を。殺せ、体当たりしろ、食いちぎれ……休まず食わず、彼女を突き動かしていた衝動があります」
 感じたままを声にする。そのシャチはメスであった。
 保護本能に基づく攻撃性を増強され、文字通りのキラーホエールに仕立て上げられていた。
 無論、水族館と違い、エサ欲しさの調教ではない。電気信号によって、攻撃したくて仕方なくなる。
 ある程度“意志”持つ生き物だからこそ出来た蛮行と言える。
 だが、ある程度の意志は、同時に“個性”の存在をも意味する。
 水が減り始める。
 すなわち、洪水に彼女という刺客を乗せて放ったと考えて良かった。
 レムリアは消えて行く生命に直面した。それは目玉機械の自爆に近い作用によるものだと判じた。機械が消失すると〝出産〟を強く促す仕組みが働くのだ。……そういう衝動の存在から判断した。但し、明らかに不自然であり、不都合な〝何か〟が体内に埋め込まれており、それが出産のプロセスを悪用して体外にもたらされる可能性が非常に高いと言えた。最早生命に対する冒涜という次元の話ではない。
 その旨話したら相原が船長譲りの人間レーダ能力で解析した。脳の中に機械があって、それが〝出産せよ〟の信号を出しているなら止められるからだ。
 だが、そうではないようだった。
「電気的には何も感じない。そういうの促進する薬あるだろ。そっち系じゃないか?目玉機械が壊れるってことは、電気信号による自爆指令は期待できないわけだ。そこで、薬物で生き物の仕組みに働きかける」
 感情を交えぬ彼の解析が、非人間的なまでに冷徹に思えて、しかし必要以上に感傷や衝撃を煽ることもなく。
 
(つづく)

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