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2011年8月21日 (日)

アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-071-

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「判った」
 レムリアも感情を交えず答える。テレパシーで感覚を麻痺させ、内なる衝動に応じるなと暗示を掛ける。今、出来ることは孤独にさせないことくらい。今、彼女の腹部深奥では、応じて大量の出血が生じている。ホルモンの分泌まで止める能力は自分にはない。
 彼女の記憶が走馬燈のように流れる。人間でも良く言われる、今際(いまわ)に見えるというそれであろうか。
 記憶を追いかける。元々水族館の生まれのようである。幼い頃から飼い慣らされて、やがて件の機械を装着される。
「身体を傷つけられる対価としてエサが与えられ、ある種のマゾヒストに育てられる。そして、眼球をえぐられて機械を装着される」
 死に行く命を撫でながら、レムリアは記憶の中から必要と思われる情報を抽出した。
 その様子を、焦点の無い目で淡々と恐ろしいを口にするレムリアを、追って相原は怖いと評した。
 魔女の魔の部分であると。
「湖に多くの仲間がいる」
 彼女はそう伝え、助けてあげてとだけ残し、そのまま、意識が薄れていった。ありがとう。そしてごめんなさい。
「海生哺乳類の知性を悪用して破壊殺戮のサイボーグに仕立てる工場があると判断します」
 元通りの流れに戻った川の上流を、レムリアは指さした。
 シャチの吸着を解除し、絶命した身体を横たえ、添えていた手を離す。
「行くか」
 アリスタルコスがそう言った直後。
『敵さんから来たようだぞ。ガンシップ距離7マイル。さっきと同じ機体だ。シャチが死んで緊急信号が出たんだろ』
「1機だけですか?」
 相原が訊いた。
『ああ』
「じゃぁ敵の本拠は手薄かも知れんですね。下から行きましょう」
 迎え撃たず、この水路を逆流してガンシップが出払った本丸を奇襲する。
「おもしれえ」
 評したのは双子のどちらか。
 
(つづく)

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