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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-072-

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 直ちに出発する。通常、航行中のシールドは、チューブ状にキロメートルのオーダで形成されるが、ここは極めて小さく、しかし粒子密度を上げ、紡錘形(ラグビーボール形)に変形させ、船を覆って身を隠す。
 川を遡る。流れに沿って空間が存在するが、船体より常に大きいわけではない。場合によりシールドで氷を貫き、押し割って進む。水路には分合流が多いが、都度、氷下の湖に近づく方向を目指す。それはあたかも氷床下を突進する彗星である。時々瞬間的にシールドを開き、レーダの捜索を交える。
「電力消費を検出」
 すなわち明らかに人工建造物が存在する。ちなみに電流が流れるだけで電波も同時に生じる。検出は難ではない。
 速度を落とし、正確な位置を確認。
「ヘリが姿を消した座標からは20キロほど離れているが」
 電力消費を検出した座標位置の衛星写真。つまり氷の上の状況。
 ズラリ並んだ大型風車。
「風力発電?」
 レムリアは訊いた。彼女はオランダに仮寓を置くが、例の歴史的な風車の中には発電機を接続したものもある。景観保護と環境保全に一石二鳥と。
「これか?某、反捕鯨国家の観測基地だぜ、公的には。オゾン層が消えて一番被害を受けてるって主張で作った」
 相原が正面スクリーンの画像を見ながらはんてんの腕を組む。
 そして不敵な笑みを浮かべる。
「反捕鯨国家がクジラの戦闘サイボーグ作るなんざ誰も考えつかないわな」
 少なからずクルー一同驚いたとレムリアは知った。
「何だって?」
「何のために?」
「知らんよ。だが、そんなわけで輸出規制の対象国ではないからガンシップも手に入ると。ケーザイサンギョーショーの物言いだとホワイト国って言うんだ。差別的で嫌いな用語だけどさ」
「オレも嫌いは同意だ。しかし国籍識別コードはどうやって消したんだ?……まぁ、クジラの脳みそいじれるならその位簡単か」
 これはシュレーター。
 
(つづく)

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