アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-081-
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「お前ら何の話だ?」
ラングレヌスが口を挟む。銃口を管制塔に向けたまま。もちろん対人発砲ロックが作動しており撃てる状態ではない。が、抑止力としては充分。
「ご進講しますとですね。神様のご加護を受けた選ばれしレイシスト様達が、小汚い有色人種を殲滅せんとクジラ形の海中推進式ICBMこさえてましたって話でさあ。そりゃクジラじゃソノブイも反応しねぇよ」
相原は言った。ソノブイとは、水中音波探査装置と衛星通信装置を備えたブイ(浮標)のことだ。潜水艦の接近を探知し、衛星経由で知らせる。
イヤホンにピン。
『氷床の振動をキャッチ。この真上にガンシップが帰還したと見られる』
すると程なく、レイシストの手先達の顔が恐怖一転、薄笑いに変わった。
「死ね猿。今度はお前らが漏らす番だ」
ガンシップの乗員が武装して応援に来るという確信のなせる技であろう。
「どうする相原船長殿……俺たちは構わんぜ」
アリスタルコス。それは、殺人も厭わないという意思表示だ。レムリアは反射的に首を左右に振った。正義の気持ちは受け取るが。人間の業に値しないのは確かだが。
「こんな雑魚ほっとけ。手を汚すだけこっちの損だ。各位、本船はクローキングの上……」
以下その象徴の島をTと書く。南半球に存在するとだけしておく。
「Tへ急行する。なお、ミサイル化クジラ2頭が攻撃として放たれているので、通信プロトコルに基づき誘導電波を追跡願う」
「ここは放っておくのか?」
ラングレヌスの当然の疑問。
「上のヘリコプターはどこが供給したんだい。トカゲの尻尾をしばらく温存しとこうぜって話さ。しかも地球規模の軍用ネットワークに割り込み掛けられるって事は、共用する同盟国側にシンパがいないと説明できない。一つの国の暴走じゃねぇよ」
(つづく)
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