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【理絵子の小話】出会った頃の話-14-

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「理絵ちゃんって優子のこと知ってたのか?あれ?でも……」
 バイクの主の名。
「奴は知ってんだっけ?」
 続いて桜井優子が驚く番。
「お前何でマサさん知ってんの」
「俺が世話になったんだよ」
 マスターが先に言った。
 低いトーンで、視線をずらして。
 理絵子は父とマスターが〝警察とそのご厄介〟の間柄に起因することは知っているが、ご厄介までの因果は知らぬ。幼い頃、庭の焼き肉パーティに彼がいたことは覚えている。
「……すいません。余計なこと」
 桜井優子は申し訳なさそうに言った。それは、その過去の知らぬ因果が、タブーに近い内容であることを意味した。
「気にするな。それより優子が理絵ちゃん連れてきたってのは、お前が紹介したい友達が理絵ちゃんって認識でいいんだな?」
「はい。なので、彼女をスイーツ責めに……」
 え?え?え?
「よし請け負った。まぁ二人とも入れ。さてお客様方、当店は本日に限りましてこれより2時間ケーキバイキング……」
 幾らか女子大生が客としていたらしい。ワッと歓声が上がってマスターの声をかき消す。
 二人は店内に入ると、最も隅のテーブルに座った。お冷やにおしぼり。
「しかし君らどうやって知り合った」
 マスターはケーキメニューを見せて訊いた。
「クラスメート」
 理絵子は答える。
「そうじゃなくて。優子の家に行った理由だよ」
「ギョウ虫検査忘れずに持ってきて」
 理絵子が言ったら、桜井優子が口にしたグラスのお冷やを吹きそうになり、慌てておしぼりを口元に。
「お前涼しい顔して面白すぎるよな」
「そう?つまらないよりはマシかな、と思ってはいるけど」
 とはいえ、理絵子は自分のこの種の発言が先入観の排除や落差といった観念を聞き手にもたらすことを知っている。
 清楚で可愛い優等生。だがそのイメージは多分弊害しか自分の周囲に生まぬ。
「てなわけで面白いから友達にした、です」
 桜井優子はマスターにそう言った。
 マスターは口ひげを僅かに動かし。
「そうかい。そいつはいいや。ケーキ選べ」
「ガラじゃ無いからイイよ。コーヒーだけ」
「理絵ちゃんは。イチゴのショート?」
 
(つづく)

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