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【理絵子の小話】出会った頃の話-15-

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「小倉抹茶名古屋盛り」
「渋いな。飲み物は」
「マンドラゴラブレンド」
 マスターオリジナルのブレンドであり新メニューとある。マンドラゴラとは引き抜くと叫び声を上げるという魔法植物であるが、そのごとく「あっ」と叫ぶほどの味なのだとか。
「早速試してくれるんだ嬉しいね」
 マスターは言った。
「お前ここで飲み食いは初めてか?力抜けよ。新ブレンドと言うより珍ブレンドだぜ」
「飲んだことあるの?」
「怖くて飲めるか」
 自分達の会話に女子大生達がウケている。
 ちなみに珍走団のたまり場と書いたが、マスターが日中は滞留禁止と強く諫めていることもあり、女子大生達と珍走団が出くわすことは基本的に無い。
 その時。
「うわ……」
 拒絶の意を含んだ一人の発言と、無闇に大きなバイクの音は、従って異常を意味した。
「バッカ共が」
 マスターが異常に気付き店外へ走り出す。
 一方店の前には幾度も転倒したか、傷だらけで改造排気管を生やした原付。
 降りて来るのは。
「マサさん」
「お前らっ!」
 店内に入ってきた彼らと目が会う。
 先ほどの男子生徒達である。
 桜井優子が敏感に反応した。
「何だお前ら!」
「やべっ!」
 男子生徒らは即座に取って返し、原付にまたがる。
 続いて飛びだして行こうとする桜井優子をマスターと理絵子が揃って制した。
「一人じゃダメ」
 理絵子は言った。
「でも……あいつら絶対」
「おいおい待ってくれ。何がどうなってるんだ?」
 マスターは桜井優子の両肩を掴んでテーブルに座らせた。
「……実は」
 例の男。
「フルボッコにした」(フルにボッコボコ。完膚無きまでに痛めつけた)
「え?だって、奴は……」
「もう我慢できなかったんですよ!」
 マスターの問いかけに、桜井優子は堰が切れたように言った。
 
(つづく)

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