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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-083-

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10

 
 T島。
 存在意義とその経緯に関しては、船のデータベースよりレムリアの方が詳しいので、解説を任される。
「隔離政策において、原住民保護区と名目上された結果、同国国内各所はもちろん、同様な政策をとっていた海外の民族も強制的に移住させられたようです。そして、悲劇とその曝露を経て、今ではその反省から人類学の研究所が置かれると共に、いわゆる郷土病の世界的な研究拠点になっている、というのが公的な言われ方です。研究自体は実際のようで、この船が持ってる病原菌のDNAデータにもそこで解読されたものが幾つかあります」
 基金の寄付者として名を連ねているのは、世界的な富豪や議員、俳優など。
 そのリストを見て、相原がニヤッと笑い、
「この名前同士のつながりを調べさせても面白いかもねと。残ったクジラ達は誰が誘導してどこにいるのでしょうねと」
 独り言のように言いながら、作戦テーブル液晶テレビをチョンチョン叩いて操作。
 正面スクリーンの片隅に画面が開いて文字が走る。船のコンピュータは翻訳音声を合成で放つことからも類推できるように、文脈解析機能を持っており、チャット形式で会話しながら指示が出せる。
 クジラ達はまだ南氷洋。呼吸時の通信回数がまだ少なく、明確な針路・ベクトルは読み取れない。
 人物相関の方は〝調査に入る〟との応答。
「皆さんこれより我々はT島でクジラの誘導を担う施設を叩くと共に、レムリアが説明したT島のそれら施設が、本当にそういう目的だけの施設か確認したいと思います」
 相原は言い、スクリーンに船底カメラからの島全体のショットと、そこに重ねた地図を呼び出した。
 地理的状況。T島は大陸南端から連なる島弧の中位に位置する火山島である。火山活動自体は沖積世に終了しており、山体は草で覆われグリーンのプリンのよう(相原は九州阿蘇の草千里を思い出したという)。ただ、草しか生えない……すなわち土壌は植物育成に適さず、居住するにも斜面がきつく不向き。一方、海岸部への溶岩流入で形成された平地が北部にあり、件の保護区、及び研究所はそこに配置。気候は暖流の影響で温暖であり、基づいて研究所エリアに大陸から土砂を持ち込んで植林を行った結果、海岸リゾートの保養施設のような様相を呈す。但し〝保護区〟としての機能維持のため、観光開発はされておらず研究者以外は入れない。島の北西側に空港があり、研究所関係者はそこから出入り。島を一周する粗末な道路が海岸沿いにへばりつく。
 
(つづく)

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