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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-085-

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 外気を導入し、生命保持ユニットに導き、分析システムに通す。
 正面スクリーンに画面が一つ開き、文字列が走る。次々に化学式が表示され、スペースをおいて、NO。すなわち、検出されず。
「フッ化カリウム、エチレンクロロヒドリン、ジメチルアミン、塩酸ジメチルアミン、フッ化水素……」
 同様に病原菌、ウィルスの有無も検索。結果。
「オールクリア。大気中からはCWC該当化学製剤、BWC該当細菌製剤、生物、毒素、サブユニットは検出されず」
 相原が言った。CWCとは化学兵器禁止条約、BWCは生物兵器禁止条約。すなわちそれら兵器に用いられるような毒物や細菌・ウィルスは検出されなかった。
 その間、レムリアは船外カメラをあちこち動かし、倒れた人々の様相を追った。
 とにかく出血がひどい。口腔、鼻腔、眼窩、耳……およそ人体が有する穴状の部位は勿論、人により手足の爪先や関節などからも出血した痕跡が見て取れる。なお、遺体は血液こそ赤黒く凝固しているが、眠っているようにも見える外観であり、そう時間は経っていない。長く見積もっても数日以内。
「こういうの出血熱って奴だっけか」
 相原は言った。
「その通り。空気に問題がないなら、これ以上の調査は体内のリンパや血液での調査が必要。でも」
 亡くなった方においそれと触れていいものか。
 弄ぶような気がして背筋が寒くなる。
「知り合いがいると言ったね。協力を仰げないのか?て言うか、こうなってること把握できてないのか?研究所は」
 相原の言にレムリアは躊躇しつつ、自コンソール下部からケーブルを引き出して衛星携帯電話を接続、発呼した。
 電話が繋がる……と、意外な情報が船よりもたらされた。
「着信しているセルラー(一般的な携帯電話のこと)がこの至近にあるぞ」
 
(つづく)

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