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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-088-

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 そして薬品棚の上を指さす。砂とホコリで真っ白のラジオカセット。1970年代のデザイン。
「ラジオだぞ」
「いやその中だ。CDMAのキャリアとブルートゥースのスキャンパルスを出してる」
「何だって?」
 相原の専門用語はそれぞれ携帯電話の電波方式、ワイヤレス機器用の近傍通信規格。
 果たしてラングレヌスが上背にものを言わせてラジカセを持ち上げると、外見の割りに軽い。
 レーザでカットして開いたら、プリント基板とスピーカー、液晶画面。それらを繋ぐ平面ケーブル。
 ボタンレス端末、いわゆるスマートフォンを分解したと見られる。但し、タッチパネルの用をなすスイッチシート部分ははぎ取られており、操作は不可能。
 その画面には着信有りの表示。レムリアの衛星携帯の番号。
「これは……電話の中身だけ入れてあるということか」
 本体はこちらに置き、音はスピーカーのスリットから、話す際はブルートゥースによるコードレスのヘッドセットを使って、と推察される。
「隠しておく必要があったということだな」
 その間にレムリアは机の周囲を調べる。何か事象の説明に繋がる手がかりはないか。
 電話を隠す……事前に何か把握していた証拠。
 机の引き出しを引き出す。そして気付く。超常感覚。
 引き出しを取り外して裏返す。机自体の古さの割に新しすぎる傷あり。
 幾何学的な文様に見えたので鉛筆でゴシゴシ擦ると、傷で凹んだ部分が文字として浮き上がった。
 ラテン語。「死体に触るな」「遠隔」「会話」「遠隔」「会話」「参照」とある。遠隔会話は電話の意であろうが。
「2回書いてあるのは?」
「もう一個はラジオの意味だろ」
 ラテン語は古代語であって、電話やラジオに相当する単語はない。ラテン語にしたのは仮に見つかっても容易に解読不能とするためか。
 そして、触るな。亡くなった人びとの症状と照らして、何かしら感染と見るべき。伝染防止。
 
(つづく)

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