アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-089-
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「電話に何かメッセージがメモってあるとか、録音してあるとか、だと思います」
レムリアは言った。
「船で解析しよう。本体だけあればいい。オレのラジオでも出来るか判らんが、不用意に干渉して壊したら元も子もない」
相原は言いながら、部材間の配線コネクタを引き抜き、電話機の頭脳、主プロセサが貼り付いたプリント基板をレムリアに持たせた。
「落とすな。走れば君が一番早い」
自分は重い銃を背負ってない。ウェアも小柄相応に軽い。
それは、いざとなったら自分だけ生き残れという意味でもある。
そんなこと言って欲しくない。だが、チームとは恐らくそういうもの。自分の感傷はお門違い。
「了解」
ウェア腰部のポーチに収めてロックする。
「さて名誉船長さんよ」
アリスタルコスが相原を呼ぶ。
「ああ、順調すぎる。イヤな感じだ」
対し相原はそう応じた。
「その通りだぜ。オレはワナにはまった気がしてしょうがねぇ」
「ワザと探らせるってヤツか?」
男達が銃持つ手指に力を入れ、小屋の入り口に立ち、ぐるり見回す。
晴天。木立が風に揺れている。鳥の声と、足もとに広がる無造作な痛々しい。
平和そうに見える異常な風景。
「テレパス感じるか」
「いえ……」
テレパシーは人の意識を捉えてはいない。
だが確かに、スムーズに何事もなく帰れるという気がしない。
「動くのは危険な気がします」
レムリアはそう口にし、セレネと交感を試みた。
返ってきたのは……〈息を潜めて〉。
相原が言う。
「そのお医者の携帯電話は普通のセルラーなんだよな。そしてここは島だ。大陸から電波が届くと思わない。島である以上アンテナを持ってる。通信は全てそこを通る」
セルラーとは地上局と通信する通常の携帯電話のこと。
「そりゃ全部傍受可能って事じゃないか」
ラングレヌスが言った。
(つづく)
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