アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-094-
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「フィロウィルスはエボラ出血熱とか、マールブルグ熱なんかで共通のウィルス。だったら、この人たちの症状とも一致する」
相原の舌打ちが聞こえた。
『私見を述べていいか。君の言葉をそのまま解釈すれば、薬と思って使ったところ、村人は死んでしまい、しかし医師は問題無い。そしてこの猛烈な武装集団。研究所と称しているが親玉は人種差別。これって特定人種だけに作用する生物兵器の開発だろ。核兵器じゃないのは、特定人種を粛正した後自分たち優等人種が住むとこ汚染されるから。それに、核兵器は材料の調合が面倒くさい。どっちが手っ取り早いかって話』
「貧者の核兵器か」
言ったのはラングレヌス。化学兵器・生物兵器は合成や培養で作ることが出来、大量破壊兵器としての性質は核と同様であることからこう呼ばれる。
『それをクジラの腹に埋め込んで海岸へ上陸。……良くあるだろ、海生哺乳類の迷い込み。捕鯨民族の皆さん迷いクジラどうぞお食べ下さい。エボラだって元々は死んだ動物を口にして広がる系だろ?』
感染動物をそうと知らず食することで感染する。例のクジラに持たせたとしたら?
それを、生命のリレーに関わる器官、言わば聖域に抱かせたのだとしたら。消化や免疫によって排出されず、維持される。
「でも人種間でDNAに差違はないはず。特定のどこかを改変することで人種が変わるようなことはない」
レムリアは反駁(はんばく)した。もちろん、理論的検証よりも、研究所からその旨証拠を見つけ出し……破壊すべき方が優先とは思う。自分一人が駄々こねているような気がする。
人類が、そんなことを、実際に試みるなど、信じたくないだけか。
ただ、肌の色は種ではなく、相原自身が言った通り単なる地域対応なのは確かである。現にアフリカで黒い肌を持ちつつもミトコンドリアDNAは北欧系出自の一族が存在する。遺伝子調べても意味はない。
(つづく)
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