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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-103-

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「そのヘルムズだろ。オレも知ってる。名誉白人とかいうありがたい称号を頂戴した覚えがあるぜ。牛食いの白豚の分際で猿にえらそうな口聞くなってな。おっと豚さんに失礼だ」
 相原は銃のスコープで写真を覗き、唾棄する勢いで笑った。
「全部繋がったぜ。この上院議員サマの人脈でガンシップは手に入る。Xバンドに割り込める。捕鯨反対で集めた潤沢な資金で人種殲滅研究所も運営できると」
 そこにドクターが続ける。
『だがクジラ誘導電波の発信元は攪乱されて突き止められない。現在最新のクジラの位置と針路は……』
 この島を含む大陸南縁島弧の東側に海溝がある。そこで途切れている。
「それなら海溝深淵へ潜った可能性が高いです」
 レムリアは口を挟んだ。彼らが深海に棲息する巨大イカを食うのは知られた話。
 ただ、指示による潜水か、クジラ自身の意志によるものかは不明。
「なるほど。まぁ最悪の想定としてこの島に差し向けたと仮定しておけばいいか。しかし……本尊は合衆国さんかよ。どこにでも出てくるなあの国は」
 相原が舌打ち。事実としては、21世紀初頭現在世界で最も強大で、強大故に自らを基準と自負し、自負に基づき横暴を働く自由主義の盟主。
 その最も負の側面が人種差別であり、キリスト教原理主義とも言える偏狭な非科学的権威主義である。神の名の元に正義を振りかざす構図は、彼らが敵視するテロリスト達の主張行動と実は何ら変わりない。
 その時。
-危ない-
 それが自分のテレパシーが発した緊急警報であることにレムリアは気付いた。
 自分たちが攻撃対象であること。その危難は間近に迫っていること。
 但し、各自が身に付けている哨戒装置は反応していない。銃器の照準を当てられたわけではない。
 だが、それは、すぐそばに。
 連想で呼び出された音と記憶があった。
 
(つづく)

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