アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-106-
←前へ・次へ→
レムリアは結論した。
生きて、無い。
だから、テレパシーが反応しない。すなわち。
「ゾンビ」
出来るのか。SFで良く見るが、それこそ特撮映画の〝アルゴ探検隊の冒険〟には骸骨戦士が登場するが。
現代技術は本当に出来るのか。
思い出すのは、脳波で動くオモチャ。
電子撮像データを、脳で視覚に再生させる技術。
神経と電気ケーブルを接続し、脳の指令で動く人工四肢。
例のクジラはその応用で子宮内の生物兵器カプセルを〝出産〟させるものだろう。
それら技術を総合すれば。
〈レムリア何が?〉
セレネの心配。
〈燃やせ!〉
相原の意志。彼は言葉にしたかったことを、テレパシーで寄越した。
以上、相原が投げ飛ばされてより、時間にして1秒。
「燃やしましょう!」
双子に聞こえるよう声を出す。
首の傾いた化け物が動き出す。
自分は小柄で銃を背負っていない。だから男達より早く動ける。……先ほど聞かされた根拠を、レムリアは体感した。
他方、化け物の動作がやや緩慢になったのも確かであろう。顔面が正面に向いてないため真っ直ぐ進めず、しかも頭部の左半分にダメージを受けた結果、右半身の動作が鈍い。
スローモーションでゴリラに殴りかかられるようであった。
自由に動くそれの左腕が、レムリアを捉えようとし、しかし捉えることは出来ず、空を切り、標本カプセルへ向かってバランスを崩して突っ込んで行く。
レムリアは腕の下をくぐり、相原の傍らめがけて床面をスライディングした。正確には床面の緑の体液で滑ったのだが、結果としてヘッドスライディングと同じ状況になった。
背後で破壊音。強大な殴打を受けた標本カプセルが割れた。
ホルマリン作業は火気厳禁である。つまり、逆に言えば。
水槽が倒れる有様に似て、ホルマリンをざあっと流出させながら、カプセルが床面で砕ける。
標本人体が放り出されたとき、レムリアは相原の傍らにあり、彼が手放さなかったプラズマガンの先端をそちらに向けていた。
(つづく)
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 【理絵子の夜話】城下 -09-(2023.11.25)
- 【理絵子の夜話】城下 -08-(2023.11.11)
- 【理絵子の夜話】城下 -07-(2023.10.28)
- 【理絵子の夜話】城下 -06-(2023.10.14)
- 【理絵子の夜話】城下 -05-(2023.09.30)
「小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -24・終-(2023.07.26)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -23-(2023.07.12)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -22-(2023.06.28)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -21-(2023.06.14)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -20-(2023.05.31)
コメント