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【理絵子の小話】出会った頃の話-19-

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 中学生と男D、戦意喪失。
「まだやるか?」
「さらせっ!」
 脊髄反射と言って良いだろう、彼氏はしゃがみ、そのまま横に這い、男Cのレーザポインタを手にした。
 レーザ照射。バットで反射。
 理絵子は囁く。
「お二人は殺虫剤とライターを用意して欲しい」
「わかった」
「了解」
 桜井優子が店内に戻る。理絵子は塩酸洗剤をバットの頂部に垂らす。
 アルミのバットに塩酸。
 化学式は省く。要するに反応して水素が生じる。熱が出て白煙。
 バットの頂部に穴が開いたので洗剤のボトルを天地逆さにズボッと押し込む。
 洗剤がしたたり落ちる音を確認し、竹とんぼよろしくバットを両手で挟んで回す。
「畜生!」
 作業の不気味さの故か、レーザでは無理と判じたか、彼氏は中学生の原付バイクに向かって走り、またがった。
 その足もとから手にしたのはバイクの駆動用チェーン。じゃらじゃらと威嚇的に振り回し、エンジン始動。
「りえぼー」
 桜井優子が殺虫剤を持ってきた。
「噴射!」
「おう」
「マスター」
「火炎放射器か!」
 殺虫剤のスプレーはライターの火を得て炎の柱を吹いた。
 バイクが動き、チェーンがむち打ちの要領で飛んでくる。
 ジェットの如き炎が、バットに刺さった洗剤ボトルを舐めた。
 バット内部に充満していた水素ガスに火が入る。
 体のいいバズーカ砲であった。
 巨大なビニール袋を破裂させたに近似の音がし、洗剤ボトルは白煙を吹いて宙を飛んだ。
 彼氏の顔を打ち、彼氏の首が明後日の方向に曲がり、バイクのハンドルが急に曲げられ、
 彼氏は地面に投げ出された。
 その首根っこをマスターが鉄パイプで抑え、制圧。
「まだやるか」
 彼氏、無言。最も、苦しげにもがいているので、息が出来ず声が出ないのかも知れぬ。
「お前、殺されたくなかったら消えな。それが自分がしてやれる最後だ」
 桜井優子は鉄パイプで指し示しながら言った。
 
(次回・最終回)

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