アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-117-
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「ひひひ……」
気狂いを思わせる笑い声がレムリアの足元に響いた。
波に翻弄され、左右に漂う、元医師の身体。
顔面だけ水上にあって自分を見る目は、最早死神のそれであった。
狂気の声がかき消される。建物敷地を囲う形で傭兵達が一斉に現れ、発砲して来たのである。対し船がネズミ花火のように回転を始め、FELがレーザマシンガンとして無数の光線を乱舞させ、応射。
すると、別の傭兵達が、ギロチン鉄扉の部位から次々乱入して来た。
前にクジラ、後ろに傭兵。
「テメエで逃がしたクジラにテメエが食われて死ぬと」
相原の自虐的な声があり、巨体が、ブリーチングの要領で、尾びれを地下室に叩き付けた。
男達と副長セレネと、ベッドの人々が、死を覚悟したその一方、
レムリアはクジラと目線を合わせた。
何が起こるか、判った。
-ありがとう。
その柔らかな印象を伴う意志の声は、燦然と輝く陽光の強さを持って、周囲からの圧倒的な攻撃に割り込んだ。
巨大な尾びれが傭兵達を叩き、排除し、そして元医師を波が攫って見えなくする。
クジラの身体は、レムリア達を覆う巨大な生体の壁となった。
盾になったのである。但し、クジラ自身は自爆の可能性が潜在する。
レムリアは二つ指示。まず、ベッドの人々を船に誘導する。船は幾らか残っていたガラス室を押し潰しながら着床。
そして。
「学っ!」
レムリアは相原の名を呼んだ。
「クジラの中の回路に干渉して……」
「了解。自爆を抑える」
よろよろの彼に肩を貸し、クジラの傍らへ。
しかし。
-お腹の中で何かが割れたわ。何かしらね。
相原がクジラに触れ、その意味が明らかになる。
水中から出たために、自重で子宮が圧迫された。元より、海生哺乳類には陸に上がると自重で自らの肺が潰れて窒息死というパターンが多い。
「そんな……」
(つづく)
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